タイトル(掲載誌)Institute of Social and Economic Research Discussion Papers
一般注記We consider the economy consisting of n agents and m heterogenous objects where the seller benefits v from objects. Our study focuses on the multi-object allocation problem with monetary transfers where each agent obtains at most one object (unit-demand). In the situation with arbitrary n, m and v, we show that the minimum price Walrasian rule with reserve prices adjusted to v on the classical domain is the only rule satisfying four desirable properties; efficiency, strategy?proofness, individual rationality and no-subsidy. Our result is an extension of that of Morimoto and Serizawa (2015), and so we can consider more general situation than them. Moreover, we characterize the minimum price Walrasian rules by efficiency, strategy-proofness and two-sided individual rationality.
オークションは資源・財を効率的に配分する有用な方法であり、実際に周波数ライセンスや車両保有権、または土地といった公共資源がオークションを用いて配分されている。標準的なオークション理論では効用の「準線形性」が仮定されているが、準線形型効用関数は支払い価格に対する所得効果が考慮されていない。しかし、現実で実装されているオークションでは支払価格が大規模になりうるため、所得効果の存在を無視できない。Demange and Gale (1985) は所得効果が存在する環境において、最小価格ワルラスルール(Minimum price Walrasian rule; MPWルール)が耐戦略性、パレート効率性、個人合理性、支払非負性を満たすルールであることを明らかにし、Morimoto and Serizawa (2015) は入札者の数が財の数を上回るとき、これらの公理を満たすルールが唯一MPWルールであることを示した。 オークションで対象となるものは、土地や周波数ライセンスといった公共部門や民間部門が過去に別の用途で使用していたものであることが一般的である。これらの部門(売り手側)はオークションの対象物から利益を得ているため、資源の効率的な配分を達成するには、売り手側の利益を考慮する必要がある。また、オークションを実施する際、入札者を十分に集めることができず、入札者の数が財の数を下回る場合が存在する。 Morimoto and Serizawa (2015) で得られた分析は、入札者が十分に集まり、かつ売り手が財から利益を得ないケースでのみ成り立つため、一般的な環境においてMPWルールが唯一望ましい性質をもつルールであるか否か、判断できない。本研究では入札者と財の数や売り手の利益にかんする仮定を排除しMorimoto and Serizawa (2015) の結果を拡張した。本研究で得られた結果は以下のとおりである。1) 各々の売り手の利益と一致する留保価格を伴うMPWルールが耐戦略性、(売り手の利益を反映した)パレート効率性、個人合理性、支払非負性を満たす唯一のルールである。また、2) この特徴づけは支払非負性を売り手側個人合理性(各財の支払価格は売り手の利益を上回るか同等)に置き換えても成り立つ。
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