タイトル(掲載誌)平成16(2004)年度 科学研究費補助金 若手研究(B) 研究概要 = 2004 Research Project Summary
一般注記金沢大学人間社会研究域経済学経営学系
本年度は、中国金型メーカーの金型製造過程、とりわけ設計過程における情報化の進展により、中国市場における金型取引がいかなる特徴をもって展開されるかを中心的なテーマとして掲げ調査・研究を行ってきた。ここから得られた研究成果は以下のとおりである。第一に、日系ユーザーが中国へ進出し、金型を調達する場合、高精度・高品質を要する金型に関しては、日本の金型メーカーに試作品・第一号型を設計させ、その設計に基づいて量産型あるいは二号型以降を現地ローカルメーカーに製造させるというケースが多くみられた。このことの含意は、日本の金型メーカーが作成した金型図面を現地ローカル金型メーカーに横流しをしているということである。これは、設計情報がCADという形でデジタル化されたことにより、第三者が技術的に利用可能になったことを意味しているが、同時に、日本の金型メーカーのもつノウハウが中国の金型メーカーに無償で流れていることを意味している。金型図面に関する所有権の曖昧さがこの問題を引き起こしており、日本の金型メーカーの技術・ノウハウを保護するための知的所有権問題の整備を急ぐ必要があることが浮き彫りになった。第二に、こうした日本の金型メーカーの技術に依拠した金型製造であるため、中国の金型メーカーの金型設計に関する技術蓄積が進まないという現実があり、中国の量産メーカーの製品は、日本の品質基準からすると到底そこには及ばないという問題がある。この問題は、中国が今後発展していく過程で、様々な社会的規制(環境規制、製造物責任等)が本格化するなかで、確実に制約条件としてでてくる問題である。この問題は、情報化の進展による技術進歩では賄いきれない問題であり、アナログ的な経験の蓄積が必要となる。この点が中国の今後の最大の課題であり、逆に言えば、日本の金型メーカーがまだ競争力を維持できる根拠にもなっている。
研究課題/領域番号:14780001, 研究期間(年度):2002 – 2004
出典:「情報技術を背景とした金型技術形成過程に関する日・中比較研究」研究成果報告書 課題番号14780001(KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所))(https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14780001/)を加工して作成
一次資料へのリンクURLhttps://kanazawa-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=54858&item_no=1&attribute_id=26&file_no=1
関連情報https://kaken.nii.ac.jp/ja/search/?kw=60303252
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-14780001/
連携機関・データベース国立情報学研究所 : 学術機関リポジトリデータベース(IRDB)(機関リポジトリ)