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博士論文
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ヒト生殖補助医療における培養および超低温保存法の改良
- 国立国会図書館永続的識別子
- info:ndljp/pid/11362292
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一般注記:
- 国立社会保障・人口問題研究所が行った2015 年の調査によると、夫婦全体の18.2%が不妊の検査や治療を行ったことがあると答えており、不妊に関する検査や治療を受ける患者の数は同研究所の調査開始(2002 年)から年々増加している。 ヒト生殖補助医療において卵と胚の体外培養および胚の超低温保存は欠かせ...
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書誌情報
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デジタル
- 資料種別
- 博士論文
- 著者・編者
- 遠山, 智絵美
- 著者標目
- 出版年月日等
- 2019-06-24
- 出版年(W3CDTF)
- 2019-06-24
- 授与機関名
- 麻布大学
- 授与年月日
- 2019-06-24
- 授与年月日(W3CDTF)
- 2019-06-24
- 報告番号
- 乙第6号
- 学位
- 博士(学術)
- 博論授与番号
- 乙第6号
- 本文の言語コード
- jpn
- 対象利用者
- 一般
- 一般注記
- 国立社会保障・人口問題研究所が行った2015 年の調査によると、夫婦全体の18.2%が不妊の検査や治療を行ったことがあると答えており、不妊に関する検査や治療を受ける患者の数は同研究所の調査開始(2002 年)から年々増加している。 ヒト生殖補助医療において卵と胚の体外培養および胚の超低温保存は欠かせない技術で、培養技術により体外受精後の胚は最大7 日間培養され、良好胚の選別が容易となった。また超低温保存により、移植されない余剰な胚は、効率よく保存され1 回の採卵で複数回の移植を可能とし、採卵あたりの妊娠率が向上した。さらに、生殖補助医療はがん治療前の妊孕性温存においても多大な貢献をしており、近年では超低温保存は卵や胚のみならず、卵巣でも臨床応用が開始されている。 本研究は生殖補助医療に関する3 つの技術の改良を目的として三章から構成されており、第一章では「胚培養環境の改良」、第二章では「胚の超低温保存法の改良」、第三章では「卵巣組織の超低温保存法の効率化」について検討を行った。 はじめに第一章では、培養環境のひとつである湿度に着目し改良を行った。生殖補助医療における培養は、培地の蒸発を防ぐために加湿インキュベーターが一般的に用いられており、加湿により培養器内の湿度は飽和状態となっており、真菌等が繁殖しやすい環境であるため清掃作業などの管理が煩雑である。一方で、これらの要因を除く無加湿インキュベーターでは、培地からの水分蒸発による培養成績への影響が不明なため、臨床への導入には検討が必要である。 そこで、本研究では検討のために無加湿インキュベーターを開発し(EZ-culture、株式会社アステック、福岡)、広く生殖補助医療で使用されている加湿型インキュベーターのAPM-30D(株式会社アステック)と比較した。はじめに無加湿インキュベーターは培地の水分蒸発に影響を与えるか検討するために、100 μL の微小滴培地を2 日間培養して水分蒸発率ならびに浸透圧変化を無加湿、加湿インキュベーターで比較した。次に無加湿インキュベーターは胚発生成績に影響を与えるかマウス2 細胞期胚を4 日間培養し、胚盤胞発生率を加湿インキュベーターと比較した。 実験の結果、無加湿および加湿インキュベーターにおける2 日間培養後の培地水分蒸発率はそれぞれ1.5 ± 0.0%(n=3)および0.0 ± 0.1%(n=3)であり、浸透圧変化は1.8 ± 0.3 mOsm/L(n=9)および0 ± 0 mOsm/L(n=9)であった。この浸透圧変化は市販培地のロット間浸透圧差の許容範囲である10 mOsm/L よりも低値であった。また、無加湿および加湿インキュベーターで培養したマウス2 細胞期胚の胚盤胞発生率はそれぞれ93.1%(n=2040)および91.9%(n=185)と良好であり、実験区間に有意差は認められなかった(P > 0.05)。 以上の結果から、無加湿インキュベーターの培養後の培地水分蒸発率や浸透圧変化は、胚発生に影響を与えない範囲内であることが明らかとなり、本研究で用いた無加湿インキュベーターはヒト胚の培養成績においても従来の加湿インキュベーターと差が無い事が示唆された。 次に第二章では「胚の超低温保存法の改良」として、動物由来物質を含まない卵および胚の超低温保存液の開発を行った。 2016 年の体外受精による治療周期は42 万周期で、そのうち胚の超低温保存を適応した治療周期数は約20 万周期と、多くの不妊治療患者が超低温保存胚を用いた治療を受けている。 ヒト生殖補助医療ではロット差や感染症のリスクを除くために動物由来成分を含まない培養液が使用されおり、超低温保存においても症例数の増加にともない動物由来成分を含まない保存液の開発が望まれた。そこで、植物由来の水溶性高分子で非動物由来物質のヒドロキシプロピルセルロース(Hydroxypropyl Cellulose, HPC)が従来の凍害保護物質であるヒト血液由来成分のSSS(SerumSubstitute Solution, Irvine Scientific, CA, USA)の代替となるか検討を行った。 HPC は、SSS(ヒト血液由来αまたはβ-グロブリン10 mg とアルブミン50 mg を生理食塩水1 Lに溶解)と同等の60 mg/mL をミリQ 水に溶解したものを原液として、1%または5%(v/v)濃度で保存液に添加した。SSS は5%または20%(v/v)濃度で保存液に添加した。 マウス胚は、近交系C57BL/6J マウス胚盤胞(n=996)と交雑系C57BL/6JxDBA マウス(n=128)を用いた。ヒト胚を用いた試験は、加藤レディスクリニック倫理委員会にて研究実施の承認が得られており(承認番号:13-06)、不妊治療終了後に胚の廃棄処分が決定され、研究への使用に同意が得られた患者の余剰胚盤胞(n=123)を用いた。一部のヒト胚盤胞(n=48)とマウス胚盤胞(n=203)は酸性タイロード液(Irvine Scientific)を用いて透明帯を溶解し孵化胚盤胞モデル(透明帯無)とした。 超低温保存法はCryotop Safety kit(株式会社北里コーポレーション、静岡)に従い、冷却前に胚を7.5% エチレングリコール(Ethylene glycol, EG)および7.5%ジメチルスルホキシド(Dimethylsulfoxide, DMSO)を含むEquilibration Solution(ES)に15 分浸漬した後、15% EG、15%DMSO、1 M ショ糖を含むVitrification Solution(VS)に90 秒浸漬し保存容器であるCryotop に胚を乗せ、液体窒素で冷却して保管した。また、加温は1M ショ糖を含むThawing Solution(TS)に1 分浸漬したのち、0.5 M ショ糖を含むDilution Solution(DS)に5 分、199 培地を基本としたWashing Solution(WS)に3 分浸漬したのちWS で1分洗浄した。 検討では、加温後に2 時間回復培養し、胞胚腔が確認されたものを生存胚と判定し、各保存液を用いて保存した胚の生存率を比較した。また超低温保存後に生存した胚は、ヘキストおよびプロピジウムイオダイドを用いた核の二重染色による生存細胞率の観察および、胚発生率との関連が報告されている酸素消費量の測定を受精卵呼吸量測定装置(HV-406、北斗電工株式会社、東京)で行った。さらに、HPC の凍害保護作用機序を解明するため、粘度が高くなるほどガラス転移点が高くなりガラス化しやすくなることから、HPC の粘度を測定しSSS と比較した。 また、HPC添加保存液の産仔への影響の検討として、超低温保存したマウス胚の移植試験を行った。精管結紮ICR マウスと同居した翌朝(0.5 日)に膣栓が確認された偽妊娠マウスに新鮮またはHPC 添加保存液で超低温保存した胚盤胞を移植し、18.5 日に帝王切開により出産させ出生率を比較した。 上記の検討の結果、透明帯無処置の交雑系マウス胚盤胞およびヒト胚盤胞の保存後生存率は1%、5%HPC 区、5%、20% SSS 区すべて100%あった。一方で、近交系マウス胚盤胞、近交系マウス透明帯除去胚盤胞およびヒト透明帯除去胚盤胞の保存後生存率は5% HPC 区が5% SSS 区よりも有意に高値であった(マウス:94.4%, 72.7%, ヒト:94.4%, 35.0%, P < 0.05)。保存後の生存胚における生細胞率は、実験区間で差が認められなかった(P > 0.05)。 ヒトおよびマウスを用いた酸素消費量の測定結果と、マウス胚移植試験における出生率は、どちらも5% HPC 区と新鮮区に差はなく(P > 0.05)、胚移植試験によって得られた両区の産仔に異常は認められなかった。 HPC の凍害保護作用機序の解明では、HPC 添加VS はSSS 添加VS よりも粘度が高くガラス化しやすいことが示唆され、またHPC の凍害保護作用は冷却直前のVS の段階で最も作用していることが明らかとなった。さらに、HPC は保管容器表面に胚が接着するのを防ぐことが観察され、これはHPCがSSS よりも早く保管容器に被膜を作るためだと考えられた。 以上の結果から、卵および胚の超低温保存液における凍害保護物質としてHPC が有用であることが示唆された。 第三章では、「卵巣組織超低温保存法の効率化」として組織中への凍害保護物質の浸透が効率的となるプロトコルの開発および、保存後の卵巣組織評価法の確立を試みた。 がん治療法の進歩によりがん患者の治療奏功率は向上し、治療後の生活の質が問われるようになり、医原性不妊の対策として卵巣組織の超低温保存が臨床で普及し始めた。 卵巣組織の超低温保存では、保存検体の体積が細胞と比較してはるかに大きいにも関わらず、これまで組織への凍害保護物質の浸透性の改善を検討した報告はない。また、超低温保存後の卵巣組織評価には、アポトーシス解析や卵母細胞の形態評価が用いられるが、アポトーシス経路の進行には時間を要するため保存直後の評価には不向きと考えられる。また形態評価は保存直後でも評価できるが、標本作製工程が細胞の形態に与える影響を完全に除くことは困難だと考えられた。 検討では、卵巣組織の超低温保存法にガラス化法を選択した。従来のガラス化法では組織内に凍害保護物質を十分に浸透させるため、40 分間保存液へ浸漬している。そこで、組織への凍害保護物質の浸透性を、物理的条件を変更することで改善し、平衡時間を短縮できるか検討した。浸透時の物理的条件はコントロール区の静置、振盪、陰圧、陽圧とした。卵巣組織中の凍害保護物質の濃度はガスクロマトグラフィーで測定した。 検討の結果、陰圧条件下では平衡時間を従来法の半分(20 分)に短縮でき、凍害保護物質の浸透効率が向上することが明らかとなった。 また標本作製工程の影響を受けにくい方法として、細胞間結合タンパク質のカドヘリンタンパク質の発現量に着目し、陰圧平衡による超低温保存組織への影響を検討した。検討の結果、カドヘリンタンパク質発現量は従来法を用いたコントロール区よりも新鮮区および陰圧区が有意に高値であった。また細胞密度を計測した結果、コントロール区は新鮮区と比較して有意に細胞密度が低値であったが、新鮮区と陰圧区には差がなかった。 以上の結果から、卵巣組織超低温保存における凍害保護物質の浸透は、陰圧にすることで促進され、従来法よりも保存液への平衡時間が短縮できた。さらに陰圧平衡で保存した卵巣組織の損傷は、細胞密度やカドヘリンタンパク質の発現量の比較から従来法で保存した組織よりも小さいことが示唆された。また、カドヘリンタンパク質の発現量の比較は超低温保存法の評価において有用である可能性が示唆された。
- 国立国会図書館永続的識別子
- info:ndljp/pid/11362292
- コレクション(共通)
- コレクション(障害者向け資料:レベル1)
- コレクション(個別)
- 国立国会図書館デジタルコレクション > デジタル化資料 > 博士論文
- 収集根拠
- 博士論文(自動収集)
- 受理日(W3CDTF)
- 2019-10-04T14:36:02+09:00
- 作成日(W3CDTF)
- 2019-09-05
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