一般注記本論は,従来グローバル化などの国際関係を取り扱ってきた社会科学と自然科学(ここでは進化生物学)とを学際的に橋渡ししようとする理論的な試みである。前半では,ハンバーガーの発展史などの事例を通して,グローバル化には均質性と多様性が交互に派生する永続的な循環と進化の構造があることを示す。そしてそれを説明 するために,ローランド・ロバートソン(Roland Robertson)などの学説を踏まえ, グローバル化をグローバルなレベルとローカルなレベルとの連関の視点に立って捉え直 した「グローカル化」の概念規定を行う。後半では,このような文化的・社会的1)な進化の構造と生物進化の構造との類似性に着目し,グローカル化の動態を説明するため,生物進化に係る科学の手法を借りた理 論的枠組みを仮説として提示する。そこでは,進化生物学者リチャード・ドーキンス(Richard Dawkins)の著作で知られる「利己的な遺伝子」論からの類推と,同人が提 唱した「ミーム」の概念が,グローカル化における循環的進化のメカニズムと,均質性 と多様性が共存し同時展開する一元的な構造を解き明かすのに有用であることを示す。 特に,遺伝子の変異が進化を生むのと同様にミーム2)の変異がグローカル化のプロセ スを生むこと,及びその変異が発現する場は必然的にローカリティー(地域)3)であることが本論の重要な知見となる。ローカリティーは,地理的な意味に限定せず,ソシアル・メディアを介した人の集団などの「相対的」なローカリティーも含めて考察する。グローカル化に働く力について は,本論ではミームとメディアに分けて捉えた力の分類を提示する。また,ローカルと グローバルの連動を説明する補足的なツールとして,ミクロ・マクロ・リンクに係るジェームズ・S・コールマン(James S. Coleman)の図式を援用する。以上の理論的枠組みを例証する事例には適宜言及する中で,前半で取り上げたハンバーガーの発展史に沿った検証を行う。
一次資料へのリンクURLhttps://u-fukui.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=23613&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1
連携機関・データベース国立情報学研究所 : 学術機関リポジトリデータベース(IRDB)(機関リポジトリ)