一般注記本研究では.保育士が日常の保育業務の中で作成する「保育の記録」を心理学的・精神医学的観点から体系化した「保育記録による発達尺度(NDSC)」(中島ほか,2010)の構成概念妥当性について検証を行った。4年間にわたる単一市内全園調査によって,年少から年長まで,延べ9,074名の園児についてのデータを得た。主成分分析を行ったところ,9つの下位尺度が見出され,いずれも十分な内的整合性を持つことが示された。9尺度のうち,「落ち着き」,「注意力」,「社会性」,「順応性」の4尺度は月齢との関連が弱く,子どもの行動的・情緒的問題のスクリーニングツールであるStrengths and Difficulties Questionnaire(SDQ)との関連が強いことから,生来の発達障害様特性や不適切な養育環境による不適応問題を反映する尺度であることが示唆された。逆に,「好奇心」,「身辺自立」,「微細運動」,「粗大運動」の4尺度は,月齢との関連が強く,SDQとの関連が弱いことから,子どもの適応行動の発達状況を反映する尺度であることが示唆された。このようなバランスのとれた下位尺度構成によって,NDSCは,配慮が必要な子どもの検出と早期対処を実現するとともに,現在の子どもの発達状況に適合した保育計画の策定に貢献するツールとして有効性を発揮することが期待される。
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