一般注記Virtual Screening とは計算機上で薬剤候補となる化合物を選別する技術である.そのなかでも原子間の相互作用を直接評価するドッキング計算のアプローチは,大規模な仮想ライブラリから,標的タンパク質のリガンド結合ポケットと強く結合する低分子を同定するように設計されている手法であり,このうち化合物のドッキングスコアをフラグメント単位のスコアから計算する手法をフラグメントに基づくドッキング計算と呼ぶ.この計算方法では,高いスコアのフラグメントを複数含み,かつ各フラグメントの相対的な位置関係も満たす化合物をあらかじめ検索できれば,精度を下げることなく計算を高速化できる.そこで,既知化合物の可能配座群からフラグメント対の相対位置情報を保存した検索用データベースの構築を提案した.提案するデータベースには化合物の配座が保存されており,各化合物の取り得る配座についてその配座が持つフラグメントペアとその相対位置および相対回転情報の組として登録される.また,各フラグメントペアの相対位置および相対回転情報は一定の誤差を考慮しながら符号化される.このような符号化を行うことで,複数のフラグメントペアの相対位置および回転情報をクエリとした化合物配座検索を高速に行うことができる.DUD-E 内の8 種の標的タンパク質に対する既知阻害剤を用いて,設計通りの性能を確認した.また検索速度については,実行時間が長かったケースでも1 化合物あたりの検索時間は200 ミリ秒程度と,ドッキング計算に比べると大きく下回っており,ドッキング計算に比べると十分高速でありデータベースによる配座検索機能の効果は大きいと言える.
identifier:oai:t2r2.star.titech.ac.jp:50655712
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