並列タイトル等デントウテキ スイサンショクヒン ノ フウミ ニ オヨボス シシツセイブン ノ エイキョウ
Influence of lipid elements on flavor of traditional fishery foods.
タイトル(掲載誌)平成13年度-平成14年度科学研究費補助金基盤研究(C)(2)研究成果報告書
一般注記type:Research Paper
魚に含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸の生理作用が明らかになり、魚やそれを加工した伝統的水産食品が再評価されている。しかし、食品中の脂質は加工や貯蔵中に酸化などの変化を起こしやすく、その結果は、栄養価だけでなく、味や香りなどの風味に対しても大きな影響を及ぼすことも明らかになってきている。伝統的水産食品は、n-3系多価不飽和脂肪酸だけでなく、良質のタンパク質やミネラルなどの供給源としても価値のある食品であり、これからの食糧資源としての期待は大きい。この伝統的水産食品の利用をすすめるためには、その嗜好性をより高めることが重要な課題であり、そのためには、伝統的水産食品の成分およびその変化について十分な構造解析を行い、具体的にどの成分が、味や香りなどの風味と密接につながり、また、その変化の原因になっているか、嗜好性との関係を明らかにすることが必要である。本研究では、まず、魚を加工あるいは調理する聞にその脂質がどのように変化するかを調べた。その結果、魚を煮干しゃ聞き干しにすることで、脂質の酸化が進み、多価不飽和脂肪酸が減少することが明らかになった。また、このような水産加工食品の場合、保存による脂質酸化がはやく進行することも認められた。さらに、脂質酸化は、味や香りなどの風味に対しても大きな影響を及ぼしていた。次に、アジア諸国で古くから用いられている水産加工品であるなれずしについて成分分析と官能試験を行い、その成分の風味に及ぼす影響を明らかにするための基礎データを得た。なれずしは、生魚の保存性を高め、独特の風味を付加した食品であるが、カルシウムを中心とした栄養価も期待される食品であることがわかった。すなわち、カルシウム含量が高いうえにリン含量との比が理想範囲にあり、カルシウムの有用な供給源になると判断された。なれずしの脂質を抽出し、酸化の程度を調べたところ、製造過程でほとんど変化のないことが明らかになった。さらに、脂質を薄層クロマトグラフィーで分画し、高速液体クロマトグラフィーで分析した。脂質全体の脂肪酸組成は、生さばや塩さばとほぼ同じであったが、脂質クラスごとの脂肪酸組成は、なれずし製造中に変化が起こっており、なれずしの独特の味、香り、風味に大きく関与していると考えられた。さらに、なれずしの揮発性成分をSPMEに吸着させ、GCMSにより分析したところ、30-50種類以上の成分が検出された。揮発温度を変化させることで検出される揮発性成分に変化が見られたことから、口中に含む前後でわれわれの感じる風味に変化が起こることも予想された。嗜好テストでは、酸味と塩味が特に好まれなかったが、なれずしを食べた経験のある人ほど嗜好性が高く、生臭みは好まないが、独特の香りを好む傾向がみられた。
identifier:平成13年度-平成14年度科学研究費補助金基盤研究(C)(2)研究成果報告書, pp. 1-35
連携機関・データベース国立情報学研究所 : 学術機関リポジトリデータベース(IRDB)(機関リポジトリ)