並列タイトル等ハンノウジカン パターン ノ ヘンカ オ シヒョウ トシタ クウカンテキ シテン シュトクノウリョク ノ ショウガイハッタツ ケンキュウ
Life span development study on spatial perspective-taking with response time as an index
タイトル(掲載誌)平成14年度-平成16年度科学研究費補助金基盤研究(C) (2)研究成果報告書
一般注記type:Research Paper
本科学研究費補助金によって実施した研究成果を、2つ(第2,3章)に大別して報告する。最後(第4章)に、本研究から予想される空間的視点取得能力の生涯発達過程について、仮説的モデルを提案する。まず第2章「空間的視点取得能力は高齢期にも維持される」では、児童、大学生、高齢者の空間的視点取得能力の測定結果を紹介する。特に、高齢期に入っても空間的視点取得能力が低下していなかったという画期的な発見に力点を置いて述べる。本研究では、空間的視点取得の本質を空間内を仮想的自己が移動することであると考え、これを他の情報処理過程とは分離して測定することのできる課題を新たに考案して、空間的視点取得能力の生涯発達過程を検討した。各10名の児童、大学生、高齢者が実験に参加した。彼らに、被験者正面を起点とする45度刻みの8箇所について視点取得することを求めた。被験者から視点取得すべき地点までの距離に対する平均反応時間の回帰直線の傾きは、年齢群間で差がなかった。一方、平均反応時間は大学生<児童<高齢者の順であった。仮想的自己の移動の不十分さを意味する左右逆転エラーがエラー総数に占める割合は、児童>大学生>高齢者の順に高かった。こうした結果より、高齢者の仮想的自己の移動機能は維持されていることが証明された。これは、空間的視点取得能力が高齢期に衰えるとする従来の常識を覆すものだ。この発見の意義がイメージ研究と脳科学研究との関連から考察され、今後の空間的視点取得研究の方向性が提案された。続く第3章では、「児童と高齢者の空間的視点取得能力の特性」として、児童の空間的視点取得能力の未熟さの根本原因について検討した。まず、児童12名に、空間的視点取得課題のほかにWISC-Ⅲの「記号探し課題」と「迷路課題」を実施した。空間的視点取得課題の成績と「記号探し課題」、「迷路課題」の成績との関連をみたところ、「空間的視点取得課題」正答率と「迷路課題」得点との間に有意な相関がみられ、「空間的視点取得課題」反応時間と「記号探し課題」得点との間に負の相関が示された。このことから、高学年児童は、他視点の取得能力を欠いているわけではなく、並列的な情報処理能力に特に未熟さが見られるのではないかと考えた。続いて、高齢期の空間的視点取得能力の特徴について検討した。大学生と高齢者各7名には、空間的視点取得課題のほかに、心的回転課題、ゴッチャルト・テスト、符号課題、方向感覚質問紙を実施した。空間的視点取得課題の成績と他課題の成績との関連を見たところ、高齢者群においては,空間的視点取得課題の平均正答率と心的回転課題の正答数との間に正の相関が,また空間的視点取得課題の平均反応時間とゴッチャルト・テストの正答数との間に負の相関がみられた。大学生群では,空間的視点取得課題の平均反応時間と符号課題粗点ならびに評価点との間に正の相関が示された。これより、高齢者は思考の堅さと情報処理の正確さの点で個人差が大きく、大学生は情報処理速度の違いが空間認知課題成績に反映されたのだろうと考えた。こうした結果を受けて、空間的視点取得能力の生涯発達過程をどのように考えるべきかを考察した(第4章)。そして、空間的視点取得能力の仮説的発達モデルを提案し、今後の研究の方向性を含めて論じた。
identifier:平成14年度-平成16年度科学研究費補助金基盤研究(C) (2)研究成果報告書, pp. 1-52
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