並列タイトル等ニホン ニ オケル ビョウイン キンムイ ノ コウドウ ト イリョウ キョウキュウ セイド
タイトル(掲載誌)CRR Working Paper, Series J
一般注記type:Technical Report
本稿は近年問題になっている過剰労働の存在を考慮しながら、わが国の病院勤務医の最適化行動を記述する理論的枠組みを提示する。特に、過剰労働を十分な賃金が支払われていない労働として捉えることによって議論する。本稿では次のことが示される。第一に、勤務医が過剰労働をしていない場合、病院内では患者にとって最も望ましい医療サービスが提供される。第二に、その場合、仮に病院毎に慈善水準が異なっていても一律の医療サービス水準が提供されることになり、全国一律の医療サービス水準が提供されることになる。第三に、病院内の勤務医数が限界値を下回って低下した場合、必ず勤務医には過剰労働が生じ、その結果としてその病院内で提供される医療水準は患者にとって望ましい水準以下のサービスしか提供されない。第四に、勤務医数の低下によって引き起こされた過小医療サービス水準は病院毎の慈善水準に依存して決定される。すなわち、患者に対する慈善水準が低い病院ほど、また、勤務医数の低下が著しい病院ほど過小に提供される医療サービス水準は低い。したがって、勤務医数の減少が 2004 年の新研修医制度によって引き起こされたとするならば、それは単に勤務医の労働条件の悪化のみならず、戦後のわが国の医療制度の特徴の一つとしてあげられる地域に依存しないナショナルミニマム、あるいは均一な医療供給体制にも大きな影響を与えた可能性がある。
identifier:CRR Working Paper, Series J, No. J-5, pp. 1-11
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