タイトル(掲載誌)Institute of Social and Economic Research Discussion Papers
一般注記We examine how the fear of COVID-19 contagion influences consumer expenditure patterns. We show that the consumption expenditure responses to the spread of the COVID-19 pandemic are significantly heterogeneous across generations. We find that the elderly spend less than the younger generation by at least 5% as COVID-19 spread. In fact, those aged above 60 significantly decreased their spending even on food and drink products by 13%. We also find that the elderly forgo shopping in favor of the younger generation. These heterogeneous responses are likely to be due to the fear of the COVID-19 infection.
新型コロナウイルスまん延によるマクロ経済指標の落ち込みは、これまでの景気後退局面と異なる様相を呈している。それは感染への恐怖が家計の行動に影響を与えた点である。新型コロナウイルスは高齢者や基礎疾患を持つ人にとっては重症化のリスクが高いことが知られている。そのためコロナショックは、マクロ的なショックであるとともに、各個人によって異質的なショックとしても解釈可能である。本研究は、新型コロナウイルス感染に対する「恐怖」が消費に与えた可能性を検証した。分析の前段階として、日本の家計に対する大規模消費パネルデータ(飲食料品や日用品を対象とした購買データ:インテージ社 SCI)を用いて記述的な分析を行うと、コロナ禍において、世代間で消費に異質性があることが示唆された (図1参照)。図1は各世代における消費支出の動き(2019 年平均を 100 とした季節調整値)と新型コロナウイルスの新規感染者数の推移を示している。図からは、新規感染者数が増加すると、若年者の支出額が高齢者のそれと比較して急増していたことがわかる。以上のような観察を踏まえ、差分の差分法による分析を行った結果、以下の二点が明らかとなった。一つ目に、感染症が拡大すると、高齢者は若者より支出を一割以上抑制していた。二つ目に、新規感染者数が増加すると、高齢者は若年者と比べ、買い物の頻度を抑制していた。これらの結果は、新型の感染症がまん延した場合、「感染への恐怖」が消費行動に影響を及ぼすことを示唆している。
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