タイトル(掲載誌)Institute of Social and Economic Research Discussion Papers
一般注記The observability of partners’ past play is known to theoretically improve cooperation in an infinitely repeated prisoner’s dilemma game under random matching. This paper presents evidence from an incentivized experiment that reputational information per se may not improve cooperation. A structural estimation suggests that a certain percentage of players act according to the “Always Defect” strategy, whether or not the reputational information is available. The remaining players adopt available cooperative strategies: specifically, the tit-for-tat strategy when reputational information is not available, and a strategy that conditions on the matched partner’s past play when reputational information is available.
社会的ジレンマにおける一回限りの関係では協力行動が均衡として生起しないが、理論的には、関係がいつまで持続するか分からない場合には、協力がコミュニティ内に均衡として生起することが可能である。しかしながら、過去の経済実験成果によると、私的観測のみで現実の人々が協力を持続させることは困難である。これまでの理論研究によって、コミュニティにおける社会的ジレンマの分析については、ランダムマッチングを伴う無限回繰り返しジレンマゲームとして分析されてきた。近年の理論的研究によって、ある条件を満たし、ジレンマにおける対戦相手の評判、すなわち過去の行動が観察可能であれば、ランダムマッチングを伴う無限回繰り返しジレンマゲームにおいて協力行動が生起しやすくなることがわかってきた。そこで、本研究では、協力行動の生起に与える評判情報の効果を検証するために、対戦相手の情報を常に観察できる状況を設計し、ランダムマッチングを伴う無限回繰り返し囚人のジレンマゲーム実験を行った。経済実験は Takahashi (2010、J. Econ. Theory)による理論的枠組みを踏まえて設計され、具体的には、(A)対戦相手の過去の行動(1次情報)が観察でき、そのもとで Takahashi (2010)による協力が均衡として維持される条件を満たすトリートメント、及び(B)1次情報に加え2次情報(対戦相手が過去対戦していた相手の行動)が観測でき、そのもとで Takahashi (2010)による協力が均衡として維持される条件を満たすトリートメントの両方を設計し実験を行った。実験の結果によると、私的観測のトリートメントに比べ、協力行動の生起確率に与える評判情報の正の効果は見られなかった。被験者の戦略選択に関する構造推計によると、この結果は、一部の被験者の「常に非協力を選ぶ」戦略の選択によって説明できる。評判情報の有無によらず、15%以上の被験者は「常に非協力を選ぶ」戦略にしたがって行動していたと推計された。本研究は、関西大学ソシオネットワーク戦略研究機構共同利用・共同研究および日本学術振興会の科学研究費補助金(18K01526、20H05631)の支援を受けて実施した。
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