タイトル(掲載誌)Institute of Social and Economic Research Discussion Papers
一般注記We experimentally examine the impact of a cycle path on the trad?ing of a copyable information good in networks. A cycle path in a net?work permits a buyer to become a reseller that can compete against existing sellers by replicating the good. Theory predicts that the price of the information good, even with the first transaction where there is not yet a reseller competing with the original seller, will be lower in networks with a cycle path than otherwise. However, our experiment reveals that the observed price for the first transaction is significantly higher in networks with a cycle path.
消費することが可能であり、消費者にとって便益をもたらすような情報(例えば画像や文字、コンピュータプログラムなど)は財の一種として捉えることができる(情報財)。上記の情報財は通常の財と異なり、消費によって失われず、複製が容易であるという性質を持っている。またその性質上、情報財は取引されるたびにネットワーク内に新たな売り手を生み出し続ける。したがって、ネットワーク内に後々買い手が売り手と競合する可能性がある経路(循環経路)が存在する場合、売り手の利益に対して負の効果が発生する。本研究では特定のネットワーク内で複製可能な情報財の売買を行う場合を想定し、理論モデルから得られる予測結果と実験を通じた実証結果の比較検証を行っている。実験中、各被験者は初期時点で1人の売り手と2人の買い手から構成される計3人のグループ(ネットワーク)内で、財の売買を行う。また、実験では2つの異なるネットワーク構造を想定し、それぞれの場合で結果を比較している。一つは循環経路を持つネットワーク構造であり、買い手は財を購入した後に、残ったもう一人に財を転売することが可能になる。このネットワーク構造では、売り手が潜在的に自分の競争相手となる買い手との競争にさらされ、価格が引き下げられる。もう一つは循環経路を持たないネットワーク構造であり、買い手は財を購入しても財を転売することができない。この場合、売り手が独占的な価格付けを行うため、価格が引き上げられる。よって理論的には前者の循環経路を持つネットワーク構造の方が、価格が低くなると予測される。実験の結果、理論予測に反して、循環経路を持つネットワーク構造で観測された取引価格(転売が開始される前の価格)の方がもう一方のネットワーク構造で観測された価格(ネットワーク内で初めて財が売買された時の価格)よりも高くなるという結果が得られた。また、循環経路を持つネットワークは、転売が開始された後の取引価格についても理論値との乖離が大きく、競争による価格引き下げの効果が予測よりも非常に小さかった。
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