並列タイトル等平成6・7年度科学研究費補助金(一般研究C)研究成果報告書
一般注記type:Working Paper
両年度にわたる研究の主たる目的は、2つの実験よりカメにおけるフラストレーションと道具的条件づけとの関連を検討することであった。1つ目の実験では有意な効果を得られなかったが、2つ目の実験では、カメで初めて過剰訓練消去効果(OEE)が見いだされ、学習へのフラストレーション関与の可能性も示唆された。しかし実験結果の詳細な分析と、分散試行を用いた先行実験の結果を総合すると、ラットと異なり、カメがフラストレーションを媒介とする学習をしている根拠が薄く、むしろ、サカナのような非媒介型の機構(例えばCarry-over;ある種の般化減少)に規定されている可能性が強いことが仮定される。研究の第2の目的は、過剰訓練逆転効果(ORE)に関する発展的な追加実験を行い、カメの弁別学習の機構を推測することであった。先行実験では、T迷路を用い、位置課題の弁別を与えたが、過剰訓練は逆転学習に有意な効果をもたらさなかった。注意理論によれば、無関係刺激を増やし、位置弁別課題に特有の自動化を防ぐことにより、OREの生起を予測する。そこで、白黒刺激を無関連手掛かりとして導入し、反応の自動化を防ぐ目的で出発箱の出口にゴム製のカーテンを取り付けた。その結果、過剰訓練が逆転弁別の速さに影響することがなく、OREは見られなかった。位置弁別を用いた筆者らの先行実験と比較すると、上記の条件の付加により原学習の習得が遅れたにもかかわらず、逆転学習が促進された。この事実は注意理論(Sutherland & Mackintosh, 1971)からも解釈されるが、同時に、反応負荷の増大がもたらす効果(effort)という伝統的な仮説で説明され得る。位置課題に限定すれば、カメの弁別学習は、『注意過程』の媒介を必要としないかもしれない。今後の検討課題は、媒介型と非媒介型を対比させる実験計画を用いて基礎データを蓄積すること、かつ、カメはトリのように視覚が優位であるので、それが機能しやすい学習課題設定をすることであろう。
一次資料へのリンクURLhttps://opac-ir.lib.osaka-kyoiku.ac.jp/webopac/bdyview.do?bodyid=BD00017728&elmid=Body&fname=kaken06610074.pdf
連携機関・データベース国立情報学研究所 : 学術機関リポジトリデータベース(IRDB)(機関リポジトリ)