並列タイトル等Progress of understanding for polar firn
一般注記フィルンとは、雪が密度を増して、氷に変化していく途中の過程をいいます。フィルンは、氷と空隙の部分より成り立つ複雑な幾何形状になっています。氷床の温度や堆積量の環境によって、102-103年のオーダーの時間で雪から氷への変態が発生します。密度が約830kg/m3を上回ると、空隙間の通気性がなくなります。ここでフィルンが氷に変わったと定義されています。 フィルンから氷への変態については、季節積雪やグリーンランドのフィルンなどから、いくつかの段階(ステージ)があることが知られています。初期段階は、雪の粒子がパッキングされて稠密に至る段階、次に、粒子の稠密が達成されたフィルンのなかで、塑性変形が卓越して起こる段階、次に、空隙間の通気性が失われる段階。ただし、極地内陸のフィルンでは、これらのステージの特徴は必ずしも明確ではないとの指摘もされています。 近年、氷床深層アイスコアに含まれる気泡のO2/N2比や含有空気量が、その氷が積雪として氷床に積もった当時の日射量と相関しているとの研究(Bender 2002)やX線CTが汎用的に使用可能になったことなど契機にして、フィルンの構造に対する研究が活発になりました。講演者(藤田)は、マイクロ波・ミリ波の周波数下で、フィルンのもつ幾何学的な異方性の大きさを、誘電率をなかだちとしてとらえることを研究し、南極やグリーンランドでの多数のフィルンの幾何学的な異方性と、圧密にかかわる法則性の解明に取り組んでいます。 今回のコロキでは、フィルンの構造の発達が、氷床の気温や堆積量に応じて系統的に異なることを示します。特に、涵養量の多い地点では、少ない地点と比べて、比較的脆弱な幾何異方性が氷床表面で形成されることを示します。そうした地点では、氷と空隙のなす幾何学的な構造は、鉛直方向に押され、扁平な形状をもちます。ところが、密度が約600kg/m3を上回ると、どんな地点でも共通に、空隙には鉛直に方向に長い平均構造ができあがることを最近見いだしました。この事実は、空隙は常に、氷床深部から圧密とともに押し出されてくる空気の流れを上層に逃がす排気孔の役割を果たし、地点を問わすそうした構造ができあがるということを示唆しています。この事実の他に、フィルンには最近重要な性質・法則性が見いだされています。密度クロスオーバー:氷床表面付近で低密度だったフィルンは、氷床表面付近で高密度だったフィルンよりも常に卓越して圧密し、密度の大小関係が逆転してしまうこと。含有不純物効果:フッ化物イオン(F-)あるいは塩化物イオン(Cl-)などのハロゲンのイオンを含むフィルンは変形しやすく、アンモニウムイオンを含むフィルン(NH4+)は変形しにくい。コロキでは、こうして新たに見えてきたフィルンの性質や、氷床流動やアイスコアシグナル形成のなかでもつ意味について紹介します。
Firn is a transitional state from snow to ice when densification occurs. Firn has complex geometry consisting ice matrix and pore spaces. Depending on temperature of the ice sheet or surface accumulation rate, a period of time of the order of 102-103 is necessary for this transition from snow to ice. When density becomes more than 830kg/m3, firn loses its permeability of air. At this stage, it is defined that firn changes to ice. For transition from snow and ice, various physical processes undergo. They include rearrangement of grains (settlement), plastic deformation, sintering and so on. A series of processes can be observed either X-ray CT or mediating dielectric permittivities at microwave frequencies. Using data of dielectric permittivities we can see how geometry of ice matrix and pore spaces are evolving. I will introduce recent progress on this subject.
Polar Meteorology and Glaciology Group seminar / 気水圏コロキウム 日時:4月27日(水)10:00-10:50 場所:C301(3階セミナー室)
連携機関・データベース国立情報学研究所 : 学術機関リポジトリデータベース(IRDB)(機関リポジトリ)
提供元機関・データベース国立極地研究所 : 国立極地研究所学術情報リポジトリ