一般注記白保竿根田原洞穴遺跡は、2008年の洞穴測量調査時に、人骨や貝類などの遺物が回収されたことにより発見された。その後、2010年8 月~11月までの4ヶ月間にわたって新石垣空港建設に伴う緊急発掘調査が実施された(第1次調査)。調査中には様々な分析が並行して行われ、今から約20,000BPとする八重山諸島初の旧石器時代人骨の出土など重要な成果が得られたことから、遺跡は空港敷地内に現地保存されることが決まった。
この緊急調査ののち、遺跡を適切に評価し、保存する目的で2012年度~2016年度の5ヶ年計画により、文化庁補助を受け重要遺跡範囲確認調査を実施した(第2次調査)。調査は第1次調査の手法を踏襲して実施し、約38㎡を調査し、遺跡の詳細な範囲や遺物の出土状況等を把握することができた。
調査に際しては、人類学や地質学の協力を得るとともに、関連する有識者で構成する白保竿根田原洞穴遺跡調査指導委員会を設置し、遺跡の評価を行いつつ調査から資料整理、報告書作成までを行った。
この確認調査では、主にⅢA層(下田原期)、ⅢB層(完新世初期)、ⅢC~E 層(旧石器時代・後期更新世)を調査し、ⅢA・ⅢB層からは石器の可能性を有する石英片や土器、人骨、イノシシ骨等の遺物を得た。続いてⅢC~E層からは、多くの人骨片を得ることができた。これらの遺物は、調査終了後も出土状況の再現・検証を行う目的で、可能な限り3次元の位置情報を記録した。
また、遺跡から回収した約35tにおよぶ土砂を水洗選別(フローテーション)し、微細遺物の回収を行った。この作業により、現地で回収できなかった人骨のパーツやネズミ等の小型動物骨を多数得ることができた。さらに、洞穴堆積物分析、放射性炭素年代測定、ミトコンドリアDNA分析などの各種分析作業を行った。本報告書は事実報告編として、これらの成果をまとたものである。
DOI10.24484/sitereports.19846
連携機関・データベース国立情報学研究所 : 学術機関リポジトリデータベース(IRDB)(機関リポジトリ)