一般注記史跡等妙寺旧境内は、愛媛県南西地域に位置する鬼ヶ城山系を構成するピークのひとつ、郭公岳(標高1,010m)の中腹に営まれた中世山寺遺跡である。本書は平成24年度から28年度にかけて実施した平坦部A(如意顕院跡)Ⅰ・Ⅱ区の発掘調査成果を所収した。
調査の結果、新・旧2時期の本堂跡や、客殿・庫裏一体型の本坊建物跡、本坊建物以前の鍛冶工房跡などが検出された。旧本堂段階(Ⅰ期/14 世紀代)、新本堂創建段階、鍛冶工房操業(Ⅱ期前半/15 世紀後半)�、本坊建物創建段階(Ⅱ期後半/15 世紀末~16 世紀)に整理でき、Ⅱ期前半に先立って、岩盤開削、SW001上段石積み構築と版築による敷地造成がなされている。また、建物から溝などの外溝施設、Ⅲ区苑池の施設、石積み塁線や岩盤の開削ラインに至るまで、新・旧それぞれの本堂と方向軸を共有したレイアウトを指向していることが判明した。
遺物は中世遺跡で普遍的に出土する生活雑器類のほか、青白磁梅瓶、青磁香炉、盤、瓶などの奢侈品や茶道具など、寺院としての性格を特徴づけるものが出土した。青磁菩薩像や、日本国内でも個体数の限られる龍文貼付褐釉壺の出土は特筆される。
DOI10.24484/sitereports.122605
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