並列タイトル等EDEN ニヨル カンソク ジジツ
EDEN niyoru kansoku jijitsu
タイトル(掲載誌)KEO discussion paper. G : 『アジア地域における経済および環境の相互依存と環境保全に関する学際的研究』
一般注記type:text
1 はじめに環境保全と経済成長の両立が議論されるようになって久しいが、それは同時に達成することの難しい問題との認識もすでに広まっている。日本の過去の経済発展経緯を見ても、経済成長はどうしても環境保全に優先しがちな課題であり、経済成長の過程で環境が悪化することに歯止めは利きにくい。一方、世界の状況を横断面的に見てみると、環境問題は経済発展を遂げた国でより取り組まれやすい問題であり、なぜなら経済発展をするとエネルギー消費量は多くなり、有害物質の使用機会も増加していくが、それらの利用技術が向上することによって環境被害を抑えていくことが容易になるからである。1990年代前半までアジアは世界の成長センターと言われてきており、日本を頂点にほとんどの国が世界のほかの地域に比べればかなり良好な経済状態にあるといってよい。確かに1997年の通貨危機はアジア諸国に深刻な影響を与えたのである。しかしそれもこれまでの成長の流れを逆流させるほどではないだろう。環境問題についていえば、世界一の人口を抱える中国を中心に、その問題の深刻さは広く認識されている。中国をはじめアジア諸国では今のところ経済成長が最優先課題となっており、大気汚染問題、有害廃棄物問題、水質問題などさまざまな環境問題がなおざりにされたままである。しかし上述したとおり、経済成長がある程度進めば環境問題はより取り組みやすい問題となる。そろそろ、中国も含めてこれらの国々ではそのような時期を迎えつつあるのではないだろうか。このような時期に、いったいこれらの国々がどのような現状にあるのかを明らかにし、その解決のための具体的施策を提案することは重要な研究課題といえる。このほど、アジア諸国の環境・エネルギー問題分析用産業連関表(EDEN1990:Economic Development and Environment Navigation)が完成されている。 EDENはアジア9ヶ国(日本、韓国、中国、マレーシア、シンガポール、タイ、インドネシア、フィリピン、台湾)について、産業連関表の取引表(A表)の他に、エネルギー投入物量表(B表)、B表のうち燃焼に用いられたエネルギー量だけを示したエネルギー消費物量表(C表)、C表を熱量単位に変換したエネルギー消費熱量表(D表) 、およびCO2・SO2発生表(E表)を統一の分類に基づいて統一のフォーマットで整備したデータベースである。現在に至るまで産業連関表と連携ざれたエネルギー・環境・大気汚染に関する情報が少なく、各国のそれらに対する偏差情報が制約されている。そして「同名のエネルギーは同質である」、「各国のボイラー設備が同じである」という仮定を与えたり、あるいは個別エネルギー特性は無視し、入手可能なデータを用いて全てのエネルギーに対して一括に適用してしまうこともある。しかしこのような適用は言うまでもないが、最善策ではなく次善策であり、現実が反映されずバイアスのある研究結果を導くに違いない。このような状況においてEDENのようにアジア諸国について統一的な枠組みで経済と環境問題の現状を把握できるようなデータベースの作成で新たな研究が可能になる。ここでは、第1にEDENをもとに、各国のデータベースが抱える問題点を明らかにするために、各国の投入係数を詳細に考察する。第2にEDENのような共通分類に基づくデータベース作成において直面する現実的問題として分類の対応の不一致がある。この問題を解決するためには分類を分割することが必要であり、韓国とフィリピンの例をあげながら分割の方法を提示する。第3に今後必要な施策を提案していくために、大気汚染物質の発生に基づいてその環境への影響、経済波及を具体的に考慮する。また第4に、EDENに基づいた各国比較によって、いくつかの産業すなわちエネルギー多使用産業、大気汚染物質多発生産業などを横断面比較して各国の数値がその国の特殊性を示しているのか、あるいは推計手法の問題なのかを検討する。
表紙上部に"日本学術振興会未来開拓学術研究推進事業複合領域「アジア地域の環境保全」"の表示あり
連携機関・データベース国立情報学研究所 : 学術機関リポジトリデータベース(IRDB)(機関リポジトリ)