並列タイトル等カケイ ノ コヨウ ロウドウ キョウキュウ ノ カクリツ ノ モデル ト ソノ ケンショウ : カケイ コウセイインカン ノ ソウゴ イゾン ト コヨウ キカイ ノ ダクヒ ノ センタク
Kakei no koyo rodo kyokyu no kakuritsu no moderu to sono kensho : kakei koseiinkan no sogo izon to koyo kikai no dakuhi no sentaku
タイトル（掲載誌）Keio Economic Observatory occasional paper. J
一般注記type:text
この稿では家計の各構成員の雇用機会の受諾または拒否の選択の確率を叙述するモデルの,具体化および検証の結果について報告する.ここでは家計全体の効用関数を用いず,家計構成員の各々の効用関数を設定する.このモデルにおいては,各構成員の雇用就業機会の諾否の選択は各自の効用関数に基づいてなされ,各構成員の選択は制約条件を通じて相互依存的である.家計全体の選好関数を設定しないという意味において,従来とは異なった計量経済学的モデルを,家計の労働供給行動の計量経済学的研究における一つの試論として示し,その検証を行う.ここでは分析対象を雇用に限定し,家計の各構成員の雇用労働供給確率を叙述するモデルを示す.この稿では,家計を夫婦家計に限定し,核所得者,非核所得者の概念を導入せず,夫と妻の各々の所得-余暇の効用関数を明示的に設定して,夫および妻の雇用機会への就業-非就業の選択を叙述するモデルを示す.このモデルには,「家計構成員は個々に所得および余暇についての効用関数を持ち,その効用関数に表れる所得の変数に,当該家計の所得総額が代入される.」という仮説が導入され,これによって各構成員は家計を形成すると考える.これが示すように,本稿で展開される図式では家計構成員の金銭的得失のみが就業行動の意志決定に明示的に取り上げられている.このことから,このモデルの仮説が家計構成員各々は金銭的利害のみを考慮して意志決定をすることを意味する,と理解してはならない.家計の就業行動の決定の諸要因の中で経済学的に重要と考えられる要因として所得を第一に取り上げてある.従って家計の就業行動の決定の図式において所得の変数がモデルに明示的に取り扱われる.他方,家計行動のその他の諸側面,即ち心理学的,倫理的,人類学的,社会学的,歴史学的等々の諸側価は,このモデルにおいては家計構成員の余暇と所得に関する無差別曲線の形に全て陰伏的に反映せしめられている.この研究は金銭的側面だけを陽表的に取り上げ,他の側面を無差別曲線の形状に反映せしめて構成されるモデルが,どの程度まで家計の就業行動に関する人員単位の観測事実と良い一致を得るかについての試みである.
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