並列タイトル等ニチベイ ショウヒンベツ ソウタイヒカ ノ ケイソク : ニチベイ ボウエキ コウゾウ オ ツウジタ カカク ノ ソウゴ イゾン ノ モトデ
Nichibei shohinbetsu sotaihika no keisoku : nichibei boeki kozo o tsujita kakaku no sogo izon no motode
一般注記type:text
複数の国家間において国民所得、費用・技術構造など、経済構造の実質面における国際比較をおこなうためには、商品別に存在している国際価格差を考慮する必要がある。周知のとおり、購買力平価(PurchasingPower Parity;PPP)は、実質国民所得の国際比較を可能にするための一つの代表的な指標であるが、生産関数あるいは価格関数を想定した複数国の費用・技術構造の比較のためには有効な指標足り得ない。よって本稿では、日米両国について費用・技術構造比較のために、1990年日米国際産業連関表(確報:164分類)における価格体系図式に基づいた商品別相対比価を計測することを目的としている。商品別相対価格の二国間あるいは多国間格差については、OECDおよび国連のICP(International ComparisonProgramme)によってPPPが計測され、また特に我が国においては1985年プラザ合意以降の急速な円高傾向のもと、内外価格差是正や規制緩和の問題意識のもと個別商品を対象に後に示すように様々な計測がおこなわれている。しかしOECDおよびICPによるPPP計測等は最終消費財(あるいは資本財)である各費目の購入者価格評価による価格差に重点を置いており、生産者価格あるいは産業投入価格としては適切なものではなかった。このような問題意識のもと、1994年より通産省[21]によって中間財の内外価格差調査が試みられ、またそれらの測定結果から通産省と慶應義塾大学の共同プロジェクト((財)産業研究所[17][18])によって生産者価格評価による商品別相対比価の計測が為されている。しかし、その計測のフレームワークをみると輸入財やマージンの考慮などにおいて問題点が残されたままであり、また他の統計から確認される個別商品の相対比価の比較によっては相対的に大きな乖離が存在し、かつそれを用いた分析に多大な影響を及ぼすものであった。PPPあるいは相対比価などの国際比較は、各国独自の選好場および国内相対価格体系を反映し、同一部門分類に定義された商品であってもその財自体の異質性、あるいはその商品分類内におけるウェイトの大幅な差異、銘柄の特定による代表性の問題等により、本質的に比較困難である点は否めない。しかしながら、有効な産業政策の策定のためには、国際競争力や生産構造体系の記述的な把握がいっそう重要な検討課題となっている。直接的な観察によらずに、ある特定の理論仮説に基づいた記述によってこれらの問題に答えるよりも、漸近的にせよ、より有効な国際価格差の指標へと接近する努力が払われるべきであろう。よって本稿では、OECD、 ICPによるPPP調査および国内の各種内外価格差調査など、概念や目的を異にする様々な国際価格比較に関する諸統計を統一的な分析フレームワークの中で再構成し、その比較検討を通じてより有効な価格差の指標へと接近することを試みている。以下では、次節においてまず既存の国際価格差調査における各種統計を整理することからはじめることにする。そして第3節において、日米国際産業連関表の価格体系のもとで、PPPおよび商品別・需要先別(家計および産業)相対比価(生産者価格評価による国内生産価格、国内需要価格、購入者価格評価による国内需要価格など)の定義と相互の関係を記述するフレームワークを提供することを通じて、われわれの計測方法を明確にしておきたい。輸入財の相対比価を考慮すると、日米の貿易構造を通じた価格の相互依存のもとではじめて日米相対比価(国内需要価格)を定義することができ、またそれによって基準国とする米国の非競争輸入型産業連関表における実質化も従来とは異なったものになる。そのためにも日米貿易を明確に記述した国際産業連関表をべ一スに、われわれのフレームワークを構築することには意味がある。第4節では、国際および国内マージン率の計測や日米相互の輸入比率など具体的な計測についての詳細を述べ、第5節では、同一商品について異なる資料から複数の相対比価が計測されたケースにおける選択基準を与え、各種相対比価の適合性を評価することにする。そして最後に、最終的な日米価格および相対比価体系を求めることにしよう。
DOI10.14991/004.00000055-0001
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