並列タイトル等チュウネン ヒマン ダンセイ ニ オケル ショクジ リョウホウ オヨビ ウンドウ オ モチイタ ゲンリョウ リョウホウ ガ ケッチュウ タイシャブツ ニ オヨボス エイキョウ
Chunen himan dansei ni okeru shokuji ryoho oyobi undo o mochiita genryo ryoho ga ketchu taishabutsu ni oyobosu eikyo
Diet-induced weight loss with or without exercise in obese men influence serum lipids both in quality and quantity
一般注記type:text
食事療法や運動といった生活習慣の改善による減量は肥満に起因する生活習慣病を予防するうえで有効な方法である。肥満とは過剰な脂肪を体内に蓄積した状態を指し, メタボリックシンドロームの構成要因のひとつであり, 2型糖尿病, 心臓病, 脳血管疾患といった生活習慣病の罹患リスクを高める。肥満は脂肪細胞の肥大化を伴い, インスリン抵抗性や慢性炎症などを引き起こし, 様々な要因が複雑に関与して全身に代謝異常をもたらす。そのため減量による体質改善も複合的なメカニズムによって引き起こされると予想されるが, 生活習慣の改善による減量を行った際の代謝変動の詳細は分かっていない。そこで我々は生体内の代謝物を網羅的に調べることができる質量分析計を用いたメタボローム解析技術と複数の統計手法を組み合わせることで, 肥満者において食事療法や運動からなる減量によって変動する血中の代謝物の探索を行った。本研究は筑波大学との共同研究であり, 中年男性の肥満者を対象とした3ヶ月間の減量プログラム参加者71人(食事療法群 : n=16, 食事療法+運動群 : n=55)から採取した血清の脂質を中心としたメタボローム解析を行った。
食事療法, 食事療法および運動によって体重・BMIは有意に減少し, また総コレステロール量, 血糖値やインスリン感受性, 炎症マーカーにも改善が見られ, 減量によって健康状態が向上したことが示された。しかし両群において体重の減少率に差はないが, 臨床検査値や血中の脂質プロファイルの挙動は異なっており, 運動を加えた方が代謝変化は大きいことが分かった。両群で共通して見られた特徴的な傾向として, 主にネルボン酸(24:1)を中心とした脂肪酸やそれをもつアシルカルニチンやスフィンゴ糖脂質, リゾリン脂質は増加する傾向にあり, インスリン抵抗性や炎症状態の改善との相関が見られた。また両群におけるGlcCerおよびLacCerの上昇は血栓形成抑制につながると考えられ, 肥満に伴う糖尿病や心血管疾患, 脳卒中といった疾病のリスクが減量によって緩和されたことが脂質プロファイルの変動からも観察できた。食事療法のみ行った場合, 遊離脂肪酸(Free fatty acid ; FFA)やアシルカルニチンが減少傾向を示し, ミトコンドリアにおける不完全なß酸化の解消が示唆された。一方, 食事療法に運動を加えると, インスリン抵抗性の発症に関わる飽和脂肪酸(パルミチン酸(16:0), ステアリン酸(18:0))やそれをもつアシルカルニチンの減少と奇数炭素鎖脂肪酸をもつアシルカルニチンの増加が見られ, ß酸化によるエネルギー産生が促進したと考えられる。減量による体質の改善は様々な要因によって引き起こすと考えられるが, 脂質メタボローム解析や複数の統計手法を用いる事によって, 同じ減量でも食事療法や運動といった手法によって血中の脂質プロファイルが脂肪酸分子種レベルで質的に変動することが明らかになり, 慢性炎症やインスリン抵抗性, 動脈硬化のマーカーとも関連することが示唆された。ヒトの減量過程での脂質代謝変動の情報をベースとして, 将来的には肥満改善に向けた個別的で効果的な減量プログラムの提案に繫がる可能性がある。
慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス先端生命科学研究会 2014年度学生論文集
卒業論文ダイジェスト
identifier:SFC-RM2014-003
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