並列タイトル等ギンコウ ノ モツ チホウ チュウショウ キギョウ ジョウホウ ノ スコアカ ニ ヨル ジギョウ ショウケイガタ M&A ノ ソクシン
Ginkō no motsu chihō chūshō kigyō jōhō no sukoaka ni yoru jigyō shōkeigata M&A no sokushin
一般注記type:text
地方中小企業において後継者不足の問題は深刻化しており、積極的な事業承継型M&Aが求められている。事業承継型M&Aを促すためのマッチングシステムや仲介業者は数多く存在するが、全体的な傾向として後継者不足を解決できるほどM&Aは促進されていない。その大きな原因の一つに、多くの場合地方中小企業の情報が十分に外部に周知されておらず、M&Aの候補に挙がりづらい、あるいは検討が進みづらいという実情がある。M&Aの検討材料として、現場で密にコミュニケーションをとってきた地方銀行の持つ情報は有益である。銀行が持つ情報を活用することで、地方中小企業の対外的情報不足という課題を解決できる可能性を秘めている。しかし、現場の銀行員が持つそれら有益な企業情報は財務のように単純な数値で表せない場合が多く、共有や活用は非常に困難である。
筆者らは上記背景のもと、株式会社ふくおかフィナンシャルグループからの依頼を受け、行員の持つ現場の情報を活用した事業評価手法の考案に取り組んだ。具体的には、行員の持つ情報が行内で共有、活用されることを促進するために、企業競争力の理論的知識に則り、行員への質問票より企業の人材、社会性について算出するスコアを考案した。結果としてスコアと業績の相関は見られず、より適切なスコアの考案が求められる。しかし、現場の行員が持つ情報を簡便なスコアに落とし込むという方針は銀行にとっても受け入れやすく、有効であるという所感を得た。したがって、正しく企業の競争力を評価できるスコアを考案できれば、地方中小企業の評価指標として機能し、M&Aを促進することが期待される。
そこで本稿では、地方中小企業の事業承継型M&Aを促進すべく、銀行のもつ現場の情報をもとに、地方中小企業を定量的に評価できる共通スコアを考案すること、およびそのスコアを導線として事業承継型M&Aのマッチングを促進するオンラインポータルの設立を提言する。共通スコアの考案とポータル運営は、スコア化に必要なノウハウを有した企業などを誘致して担ってもらい、プロジェクトの費用の一部、および地元銀行や企業とのネットワークの点で地域の自治体より支援を行う。誘致企業は理論的知識や銀行からの情報をもとにスコアを考案し、そのうえでスコアや銀行員の声を含む地元企業の情報をポータルに掲載する。そして、M&Aを検討している外部企業やM&A仲介組織が地方中小企業の情報をポータルにて閲覧し、スコアなどから企業の力を評価、検討することができる。その結果、従来は情報不足で進みにくかった地方中小企業の事業承継型M&A促進が期待される。
以上、本稿では地方銀行の持つ地元企業の情報をもとにした定量的な評価スコアの開発、およびスコアを含む企業情報をもとに事業承継型M&Aマッチングの促進を、必要なノウハウを有した企業を誘致、そして自治体より支援することで実行することを提言する。本提言の実現により事業承継型M&Aが促進され、地方中小企業の後継者不足という大きな課題の解決が期待される。
提言先
経済産業省(各地域の経済産業局、中小企業庁)、地方自治体
政策提言書02
一次資料へのリンクURLhttps://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/download.php?koara_id=KO12005001-00002020-0019
連携機関・データベース国立情報学研究所 : 学術機関リポジトリデータベース(IRDB)(機関リポジトリ)