並列タイトル等オリンピック・パラリンピック オ ケイキ トシタ タブンカ キョウイク ノ アリカタ : タヨウセイ ニ カンヨウナ シュリュウ シャカイ オ メザシテ
Orinpikku Pararinpikku o keiki toshita tabunka kyōiku no arikata : tayōsei ni kan'yōna shuryū shakai o mezashite
一般注記type:text
本提言では、日本に暮らす在留外国人を含む多様な背景を持つ人々が「ともに」暮らす社会の実現を目的として、日本に暮らす全ての児童生徒に対し多文化教育を実施するために必要となる制度整備のあり方を提言する。
昨今、日本国籍を持たずに日本でくらす在留外国人は増加傾向にある。1980年代以前から暮らすオールドカマーだけではなく、日系南米人の受け入れや技能実習生制度の成立など、日本は政策的に多くの在留外国人を受け入れてきた。地方自治体は外国人住民の暮らしやすい街づくりにつとめ、これを象徴する「多文化共生」という用語は、2006年に内閣府が提起した「多文化共生推進プラン」の策定によって、他の自治体にも広がった。この策定から15年ほどが経過した現在、日本社会には策定当初よりも多くの在留外国人が暮らしている。少子高齢化の進行は国内の労働力不足を深刻化しており、外国人人材は日本社会において欠かすことのできない存在である。その一方で、外国人が日本の生活で直面する問題は主流社会(=社会の多数派を構成するマジョリティの集団)が想定するよりも幅広い。今後、外国人住民がすみ良い街の形成が重要な鍵を握るだろう。なぜなら、少子高齢化と人材不足に直面する世界各国が、外国人人材の獲得競争を繰り広げており、日本社会が移民にとって魅力的な社会基盤整備を行わなければ、人材を獲得できない可能性も出てくる。
しかし、本稿が示すように、外国人が暮らしやすい街づくりを担う現場の状況は芳しくない。慢性的な専門職人材の不足、予算上の制約が大きい、多言語対応の難しさなど、課題は多い。こうした課題に対する様々な改善策が提示されているが、一つ重要な要素が議論から抜け落ちている。それは、マジョリティの集団としての日本人たちが多文化共生社会のなかでどのように変容していくべきかという視点である。アメリカ、イギリス、ドイツなど古典的移民国家がマジョリティの集団に対しても多文化教育を行ってきたのに対して、日本の多文化共生ではマイノリティに対してのみ日本語教育を行うだけでマジョリティの集団がマイノリティについて学ぶ機会すら少ないのである。日本は実践レベルでの多文化共生のための政策を講じると同時に、多民族・多文化との共存がいかなるものかという理念的側面を学ぶ教育環境整備を進めるべきである。こうした中長期的な教育的努力が、専門職に対して魅力を持つ人々を増やし、外国人支援の現場を暫時的に変えうる。これを実現するために、本稿では以下4つの策を提言する。
提言1: 日本におけるマジョリティを対象とした多文化共生教育のあり方に関する調査事業の実施
提言2: モデルカリキュラムの開発、教員養成の指針の策定
提言3: 教員養成課程における多文化共生に関わる必修科目の導入
提言4: 全ての地域において多文化教育プログラムの実施推奨
なお、筆者は「多文化共生」という概念それ自体が持つ多文化・多民族の社会的包摂という中核的理念や多文化共生推進に係る日本社会のこれまでの努力を高く評価している。本稿は、これまで各地域で実践されてきた多文化共生に向けた取り組みを否定するものでは全くない。オリンピック・パラリンピックを契機として各地域で外国人受け入れ整備が進められる中、現状をさらにより良い方向に進めるための一方法として、昨今の多文化共生推進に係る施策を批判的に検討することを試みる。
提言先 文部科学省
政策提言書07
一次資料へのリンクURLhttps://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/download.php?koara_id=KO12005001-00002019-0122
連携機関・データベース国立情報学研究所 : 学術機関リポジトリデータベース(IRDB)(機関リポジトリ)