並列タイトル等ブンリ ユウゴウ ジンザイ ハイシュツ ノ タメ ノ ダイガク キョウイク カイカク : ヒト ト カガク ギジュツ ノ キョウセイ オ ジツゲンスル タメ ニ
Bunri yūgō jinzai haishutsu no tame no daigaku kyōiku kaikaku : hito to kagaku gijutsu no kyōsei o jitsugensuru tame ni
一般注記type:text
我々の社会や日常生活は、科学や科学技術から大きな影響を受けている。例えば、人類の歴史を振り返っても、天動説、微分積分、印刷技術、インターネットなどさまざまな科学的知見や技術が、未知を既知へと変え、新たな可能性を拓いてきた。
他方で、科学技術は可能性だけでなく、様々な課題をもたらすこともある。時間や空間の制約を超えて人と人とを繋いだ情報技術や、情報のカオスを意味あるビックデータに変貌させたAIは、政治のあり方を変容させ、民主主義の“もろさ”を露呈させた。さらには、社会に存在していた分断を可視化し、それによって、さらなる分断を再生産している現状にある。
このような現実を前にして、今日では、どうすればテクノロジーと上手く付き合い、それを使いこなすことができるのか。技術のもつ可能性とリスクの双方を目の前にして、いかにして、規制と促進との適切なバランスを実現すべきか。こうした問いが、大きな意味を持つものとして再認識されるようになった。
これについて、最近では、テクノロジーガバナンスが意識され、研究開発された技術をベースに未来を描くのではなく、バックキャストで未来を描く必要性が説かれるようになった。具体的には、科学(技術)の研究プロジェクトにおいてもELSI(Ethical Legal Social Issues)や、RRI(Responsible Research and Innovation)にかかる世界的な取り組みが始まりつつある。
そして、バックキャストで未来を描くために必要な“知”とは、文系・理系という従来の学問による区分を超えた文理融合知に他ならない。つまり、文系と理系が共に在るべき未来を描き、人類と技術の共生を実現させることが求められているのである。そして、その実現のためには、文理の壁を超えた“文理融合の知”を備えた人材を育成し、輩出していくことが不可欠の条件である。しかし、残念ながら、我が国の高等教育(特に大学教育)は、文理融合の知を教育するプラットフォームとして機能を十分に果たしているとは言えない状況にある。
そこで、本提案では大学の学部時代の教育からカリキュラムの柔軟な選択を可能にする文理融合人材育成のコースを設けることを提言するものである。そこでは、文理融合の知を実践に耐えうるものに鍛え上げるために、社会人メンター制度を取り入れ、実社会の課題に挑戦する演習型授業を実施する。最後に、学士卒業時点においては、デュアル・ディグリーの取得を目指すことで、文理融合の知のクオリティーコントロールを実現したい。
本提言の狙いは、総合大学の学士課程に在籍する学生、特に文系学生に対して、文理融合の知を訓練することで、文理の垣根を超えてあるべき未来像を描くことに貢献できる人材を輩出することである。そして、あるべき未来を見据え、社会を先導し得る文理融合人材を輩出することは、実社会において文理融合の知を創発することにも貢献すると考えている。それにより、技術と人類の共生という世界が挑んでいる難問についても、我が国が世界に先駆けて、一定の回答を与えることができると信じている。
提言先:
内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局
文部科学省 高等教育局
慶應義塾大学
2022年度発表者 政策提言書04
一次資料へのリンクURLhttps://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/download.php?koara_id=KO12005001-00002022-0086
連携機関・データベース国立情報学研究所 : 学術機関リポジトリデータベース(IRDB)(機関リポジトリ)