金沢大学医薬保健研究域医学系
【目的】我々は,昨年,三次元解析による母指筋力測定装置を開発し,母指手根中手関節(以下,母指CM関節)の屈曲,伸展,外転,内転力を計測した.今回は,さらに三次元動作解析装置と同期させて関節トルク計測システムを開発し,母指CM関節の屈曲,伸展,外転,内転トルクを検索し各筋の寄与を検討した.【対象と方法】対象は,健常女性15名30手の母指で,年齢は21.5±0.6歳であった.本システムは,三分力計を用いた筋力測定装置と,デジタルビデオカメラ2台を用いた三次元動作解析装置で構成される.前者で,母指CM関節の屈曲,伸展,外転,内転の各押し力を,後者で,母指CM関節からセンサー部までの距離を計測し,各々押し力と距離を乗じて,母指CM関節の各トルクを算出した.計測肢位は,肩関節屈曲60度,前腕中間位,手関節背屈40度,母指CM関節橈側外転20度とした.各トルクの計測は,末節骨,基節骨近位部の2通りの部位で行い,各3回計測し,その平均値を測定値とした.各トルクの統計処理は,一元配置分散分析を使用し多重比較検定にはTukeyの方法を用い,末節骨部と基節骨部の比較は,対応のあるt検定を用い,ともに有意水準を5%とした.【結果と考察】末節骨部の屈曲トルクは平均2.03Nm,伸展は0.66Nm,外転は0.95Nm,内転は2.44Nmで,基節骨部の屈曲は1.87Nm,伸展は1.24Nm,外転は1.04Nm,内転は2.80Nmであった.末節骨部と基節骨部はともに,内転と屈曲が,伸展,外転より有意に大きく,さらに基節骨部の内転は,屈曲より有意に大きかった.また,基節骨部の伸展,外転,内転は,末節骨部より有意に大きく,末節骨部と基節骨部の計測において,寄与する筋の作用効率が異なることが推測された.
研究課題/領域番号:15700365, 研究期間(年度):2003 – 2004
出典:「母指の屈曲・伸展,内転・外転運動における各筋張力の推定」研究成果報告書 課題番号15700365(KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所))(https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-15700365/)を加工して作成