タイトル(掲載誌)平成11(1999)年度 科学研究費補助金 奨励研究(A) 研究概要 = 1999 Research Project Summary
一般注記金沢大学医薬保健研究域薬学系
ウロカニン酸(UCA)はヒスチジンが代謝されて生成し、皮膚組織に特異的に蓄積している。紫外線照射は皮膚組織内に本来trans体で存在するUCAをcis体へ異性化させるが、このcis体が紫外線発がんを促進させると考えられている。本研究はこのUCAによる発がん促進機構の解明を目指して以下の研究を行った。はじめに本研究に必須だが市販されていないcis-UCAの精製を行った。trans-UCAをDMSOに溶解させ紫外線を照射することによって異性体の混合溶液を作り、これをHPLCで分離しcis-UCAを精製した。cis-UCAの精製はHPLC、^1H-NMR、マススペクトル、融点およびマウス接触過敏症の抑制効果によって確認した。cis-UCAとtrans-UCAを用いて、マウス紫外線発がんを抑制するナチュラルキラー(NK)活性への阻害効果を検討した。野生型マウス脾臓細胞のYAC-1細胞に対するNK活性の測定を行った結果、cis-UCAのみにNK活性の抑制効果が認められた。この結果は紫外線発がんを抑制するNK細胞が癌細胞を排除するために皮膚組織に局在した場合、紫外線によって皮膚に生成するcis-UCAによって活性が阻害され紫外線発がんが促進される可能性を示唆する。次に、cis-UCAによるNK活性抑制効果の作用機構の解明を試みた。T細胞を仲介した機構が存在する可能性を検討するため、T細胞を欠損したヌードマウス脾臓細胞を用いてcis-UCAによるNK活性抑制効果を検討したが、有意な抑制効果が認められた。よって、cis-UCAによるNK活性抑制機構でのT細胞の関与は否定された。さらに、IL-10を仲介する可能性を検討するために、抗IL-10中和抗体の効果を検討したが、IL-10の関与を示唆する結果は得られなかった。また、cis-UCAのNK活性抑制機構におけるヒスタミンレセプターの関与をマレイン酸クロルフェニラミンとシメチジンを用い検討した。その結果、どちらを用いた場合もcis-UCAのNK活性抑制効果を抑えることができず、cis-UCAのNK活性抑制機構にH1、H2レセプターの関与を示唆する結果は得られなかった。今後は、マウスでの紫外線発がんへの効果および紫外線によって誘発されるDNA損傷の修復能および突然変異誘発への効果を解析していく予定である。
研究課題/領域番号:10771286, 研究期間(年度):1998 – 1999
出典:「紫外線発がん過程における皮膚代謝産物の役割」研究成果報告書 課題番号10771286(KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所))(https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10771286/)を加工して作成
関連情報https://kaken.nii.ac.jp/ja/search/?kw=20232275
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-10771286/
連携機関・データベース国立情報学研究所 : 学術機関リポジトリデータベース(IRDB)(機関リポジトリ)