タイトル(掲載誌)平成14(2002)年度 科学研究費補助金 特定領域研究 研究概要 = 2002 Research Project Summary
一般注記金沢大学医薬保健研究域医学系
発達期における過剰シナプスの除去は脳神経回路の精緻化に不可欠である。小脳の登上線維(CF)-プルキンエ細胞(PC)シナプスはシナプス除去の代表的モデルであるが、その素過程であるPC樹状突起に対するCF間競合を連続観察する技術の開発を行った。基本戦略として、異なる蛍光色素で標識したマウス胎児由来の下オリーブ核(IO)片と単離PCを共培養し、それらの神経突起をレーザー共焦点顕微鏡で観察する方法を採った。IOを200μm角に手動スライスしたものから500μm内外のCF様突起が伸展した。酵素処理やピペッティングにより作成したIO片では突起が伸展しなかった。手動スライスIO片に蛍光色素を塗布したが、突起伸展が盛んなIO片深部のニューロンを標識できなかった。そこで脂溶性蛍光色素(DiIなど)を金属微粒子に載せてジーンガンによりIO片に打ち込んだ。Polyvinylpyrrolidoneを用いて1弾丸当たりの微粒子数を高密度化し、比較的高い圧力(100psi)で射出することにより、極めて効率良くCF様突起を標識できた。PCの蛍光標識は特異的プロモーターL7の制御により蛍光物質GFPを遺伝子発現するマウスの作出により実現した。以上の方法で準備したIO片とPCを小脳グリア由来神経栄養因子であるL-セリンを含む超低血清培地と顕微鏡上に設けた小型炭酸ガス・インキュベーターを用いて維持することにより、数日〜2週間に渡ってCF様突起伸展を観察できた。インキュベーター内温度変化により標本が上下動する問題が生じたが、インキュベーターを恒温テントで覆うことにより解決し、共焦点顕微鏡による高倍率長時間連続観察が可能になった。更にシナプス形成の効率改善を目的として神経突起伸展促進因子を探索した結果、1型インスリン様成長因子がp38キナーゼなどを介してPC樹状突起発達を促進することを明らかにした。
研究課題/領域番号:13035016, 研究期間(年度):2001-2002
出典:「発達期の中枢神経系におけるシナプス除去機構:In-vitroアプローチによる研究」研究成果報告書 課題番号13035016(KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所))(https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13035016/)を加工して作成
関連情報https://kaken.nii.ac.jp/ja/search/?kw=80303270
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-13035016/
連携機関・データベース国立情報学研究所 : 学術機関リポジトリデータベース(IRDB)(機関リポジトリ)