タイトル(掲載誌)平成19(2007)年度 科学研究費補助金 若手研究(B) 研究概要 = 2007 Research Project Summary
一般注記金沢大学医薬保健研究域医学系
TsixによるヒストンH3リジン27残基のトリメチル化(H3K27m3)抑制の生物学的な役割を明らかにするために、EedノックアウトES細胞を用いてTsix遺伝子トラップを行いX染色体不活性化に与える影響を調べた。TsixとEedのダブルミュータント雄マウスES細胞では、ES細胞の分化誘導に伴ってXist遺伝子の異常な転写活性化が認められた。TsixあるいはEed単独の変異雄ES細胞ではこのようなXist遺伝子転写活性化は起きないことから、アンチセンス遺伝子Tsixとポリコーム蛋白質Eedが協調的に働いてXist遺伝子の異常な転写活性化を抑制していることが分かった。一般的にEedを含むポリコーム複合体2(PRC2)によるH3K27m3修飾は、Hox遺伝子など発生時期特異的に発現する遺伝子の異所性発現抑制に寄与していることが知られている。Xist遺伝子も雌細胞の不活化X染色体で分化に伴って発現する発生時期特異的遺伝子と考えることができる。今回の我々の結果はアンチセンス遺伝子Tsixの転写がヒストン修飾を妨げてクロマチン構造の変化を抑制し、分化誘導時にXist転写をONにもOFFにも出来る状態を維持するように働いていることを示している。一方でEedは非特異的な転写因子によるXist遺伝子の異所性発現を抑制しているものと考えられた。興味深いことに雌ES細胞ではXist遺伝子プロモータがH3K27m3修飾を受けていてもXist遺伝子の転写誘導が起きることが報告されている。つまりH3K27m3修飾は生理的な遺伝子活性化を妨げず非特異的な異所性発現のみを抑制していると考えられ、これを実現する分子メカニズムの解明が待たれる。
研究課題/領域番号:18780250, 研究期間(年度):2006 – 2007
出典:「アンチセンス遺伝子Tsixによるクロマチン構造初期化の研究」研究成果報告書 課題番号18780250(KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所))(https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18780250/)を加工して作成
一次資料へのリンクURLhttps://kanazawa-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=54680&item_no=1&attribute_id=26&file_no=1
関連情報https://kaken.nii.ac.jp/ja/search/?kw=40372487
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18780250/
連携機関・データベース国立情報学研究所 : 学術機関リポジトリデータベース(IRDB)(機関リポジトリ)