タイトル(掲載誌)平成22(2010)年度 科学研究費補助金 奨励研究 研究概要 = 2010 Research Project Summary
一般注記金沢大学附属病院
本研究によって開発された術中モニタリング法は、判定に影響を及すアーチファクトの処理技術を改良するとともに、抗ノイズ性に優れたコンボリューション演算による相互相関関数の特質を応用し、術前の基準波形からの波形変化の定量的な数値化を行うことによって、周波数特性に依存しない精度と安定性を有する術中モニタリングを可能にした。本法の開発のための一連の研究によって、術中誘発電位に関する新たな知見を明らかにすることができた。すなわち、1.ウェーブレット変換を用いた記録誘発電位の多重解像度解析では、記録波形に包含するアーチファクトは、異なった特性を有する複数の成分に分解され、術野からの電気刺激強度に依存して定常的に発生している基底変動と電磁誘導や術野環境の変化に応じて発生するカラーノイズとの重畳によって説明することができた。基底変動成分は、記録波形のリサンプリングとトレンド除去フィルタによる前処理によって抽出除去が可能であった。2.モニタリング時に得られる相互相関関数は、特徴的な減衰振動パターンを呈していることが判明した。この減衰振動パターンの変化は、単に、誘発電位波形の周波数特性を反映しているだけではなく、波形潜時、振幅変化に依存していることが明らかになった。3.コンボリューション演算の正規化によって得られる相互相関係数は、通常、その最大値と循環点ゼロ(τ=0)の値は一致するが、波形の回復過程においては、その程度に応じて両者は大きく乖離する現象を認めた。この乖離は、波形の回復過程における潜時成分変化によって説明することが可能であった。本モニタリング法は、その高い抗ノイズ性によって、波形計測を中心にした判定法の誤りを最小限にすることに加え、誘発電位波形の微少な変化に対する検出力を有しており、従来法の欠点を克服した実用的な術中モニタリング法として有用であると考えられた。
研究課題/領域番号:22931007, 研究期間(年度):2010
出典:研究課題「コンボリューション演算を応用した脳神経術中モニタリングにおける診断技術の研究」課題番号22931007(KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所)) (https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22931007/)を加工して作成
関連情報https://kaken.nii.ac.jp/ja/search/?kw=22931007
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22931007/
連携機関・データベース国立情報学研究所 : 学術機関リポジトリデータベース(IRDB)(機関リポジトリ)