タイトル(掲載誌)平成9(1997)年度 科学研究費補助金 重点領域研究 研究概要 = 1997 Research Project Summary
一般注記金沢大学医学部
本研究の目的は、ゲノム機能解析のための一手段として、“Antisense Display"法という新しい遺伝子スクリーニング技術を確立することである。本法は、(1)ほぼ総てのmRNA分子種をカバーする-アンチセンスDNAレパートリーの作製-(2)細胞の機能/表現形質変化を来すアンチセンス配列の同定→(3)5′センスプライマーと3′アンカー型プライマーを用いたRT-PCRによるcDNAクローニング→(4)構造決定(5)当該遺伝子の機能検定の計5ステップからなる。平成9年度は、(3)と(4)のステップの検証のため、新規血管新生制御因子の分離に本法を適用した。1.内皮細胞の増殖を指標としてアンチセンスDNAレパートリースクリーニングを行い、最終的に内皮細胞増殖を抑制する単一のアンチセンス配列を同定した。2.同定されたアンチセンス配列に対応するセンスプライマーとアンカー型オリゴ(dT)プライマーを用いヒト微小血管内皮細胞ポリA^+RNAを鋳型にてRT-PCR法を行い候補cDNAを3種分離した。3.得られたcDNAの塩基配列を決定した結果、cDNAの一つ(clone2)は10merアンチセンス配列と100%マッチする配列を有し、残りの二種(clone30,32)はアンチセンス配列と10塩基中9塩基が一致する配列を有していた。4.DNA配列データベースでの相同性検索の結果、clone2はミトコンドリアNADH-ubiquinone oxidoreductase chain 3をコードするcDNAであることが判明した。また、clone30,32は新規遺伝子で、それぞれ酵母のMIC1 cDNA、マウスのNck interacting kinase(NIK)cDNAと相同性を示した。次に、10mer領域を含む各mRNAに特異的な16〜18塩基のアンチセンスオリゴヌクレオクドを作製し、各アンチセンスがヒト微小血管内皮細胞DNA合成に及ぼす影響を解析した結果、clone2とclone30に相補的なアンチセンスがDNA合成を阻害した。コントロールのセンスオリゴヌクレオチドおよびclone32に対するアンチセンスは内皮細胞DNA合成に影響を及ぼさなかった。以上より、ミトコンドリアNADH-ubiquinone oxidoreductase chain3遺伝子と酵母MIC1と相同性を示す新規遺伝子clone30が内皮細胞増殖に関与することが示された。MIC1蛋白は酵母転写因子Maclpに結合する蛋白質で、関連遺伝子が脊椎動物で分離されたのは初めてである。5.本法の有効性を他のモデルで検証するため、新規がん抑制遺伝子の分離を目的にNIH3T3細胞の足場非依存性増殖を指標にアンチセンスDNAレパートリーの一次スクリーニングを行った。その結果、足場非依存性増殖を促進する数種の候補サブプールを得た。以上、本年度研究により機能性遺伝子スクリーニング法として“Antisense Display"法が有効であることが示された。
研究課題/領域番号:09272210, 研究期間(年度):1997
出典:研究課題「Antisense Display: 新しい機能性遺伝子スクリーニング法開発の試み 」課題番号09272210(KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所)) (https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-09272210/)を加工して作成
一次資料へのリンクURLhttps://kanazawa-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=59723&item_no=1&attribute_id=26&file_no=1
関連情報https://kaken.nii.ac.jp/search/?qm=00115198
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-09272210/
連携機関・データベース国立情報学研究所 : 学術機関リポジトリデータベース(IRDB)(機関リポジトリ)