タイトル(掲載誌)平成8(1996)年度 科学研究費補助金 基盤研究(C) 研究概要 = 1996 Research Project Summary
一般注記金沢大学工学部
レーザアブレーション法を用いた本研究の目的は、種々の薄膜の堆積機構の解明である。対象としたのは主に、不揮発メモリ用強誘電体として注目されているPb(Zr_<1-x>Ti_x)O_3(PZT)やPZT用電極として提案してきた新しい電極材料であるTi_<1-x>A1_xN(TAN)である。その他、YBCO高温超伝導体薄膜や、BiIG強磁性体薄膜についても研究を行った。PZT薄膜は還元雰囲気で作製された時、Pb濃度が欠損することが知られているが、その原因は不明であった。ここでは、Pb及びPbOの高い蒸気圧による堆積粒子からのPbの蒸発欠損モデルとZr、Ti原子によるPbのスパッタによるスパッタ欠損モデルである。低い基板温度で真空中で作製されたPZT薄膜で生じるPb欠損は、スパッタモデルでも蒸発モデルでもいずれでもほぼ説明可能であることがわかった。しかし、高い基板温度で高い希ガス雰囲気圧力で生じるPb欠損は蒸発モデルでのみ説明される。しかし、低い基板温度で真空中で作製されたPZTでのPb欠損は、基板上で中央付近で顕著というプルームに対して横方向の不均一性と、ターゲットからの距離が大きいほど顕著となる縦方向の不均一性という2種類の不均一性を有している。前者はスパッタモデルでのみ、後者は蒸発モデルのみ説明され、未だこの矛盾は解けていない。またTAN電極薄膜の堆積過程を調べた実験では、TANターゲットを窒素雰囲気でレーザアブレーションし、その結晶性や不純物酸素濃度などを調べた。その結果、真空雰囲気よりわずかに窒素ガスを導入した雰囲気の方が、結晶性もよく、酸素濃度も少ないことがわかった。しかし、過剰の窒素雰囲気圧力はむしろ結晶性を劣化させ、酸素濃度を増やすという結果となった。これは、わずかの窒素ガスはTAN薄膜の窒素欠損を補い、過剰の窒素ガスは堆積粒子の冷却を招き、マイグレーションを抑制したためと思われる。
研究課題/領域番号:08650008, 研究期間(年度):1996
出典:研究課題「レーザアブレーションにおける薄膜堆積機構解明」課題番号08650008(KAKEN:科学研究費助成事業データベース(国立情報学研究所)) (https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08650008/)を加工して作成
一次資料へのリンクURLhttps://kanazawa-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=59871&item_no=1&attribute_id=26&file_no=1
関連情報https://kaken.nii.ac.jp/search/?qm=60143880
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08650008/
連携機関・データベース国立情報学研究所 : 学術機関リポジトリデータベース(IRDB)(機関リポジトリ)