一般注記高レベル放射性廃棄物地層処分における人工バリアの長期物理的安定性を評価するために、処分坑道(又は処分孔)から周辺岩盤亀裂への緩衝材の流出挙動を定量的に把握する必要がある。緩衝材の流出が大規模に起こる場合は、処分坑道(又は処分孔)内のベントナイト量が減り、緩衝材に期待される諸機能が低下することが考えられる。また、緩衝材の浸食によりベントナイトコロイドが発生し、これが放射性核種を搬送する可能性も指摘されている。緩衝材の流出は、(1)ベントナイトが膨潤することによる亀裂への侵入現象(extrusion)、(2)亀裂へ侵入したベントナイト粒子が地下水の流れにより浸食される現象(erosion)の二つの現象によるものと考えられている。本研究では、緩衝材流出挙動試験設備(BENTFLOW)を用い、これらの現象を模擬した試験を行い、extrusion現象の速度及び浸食現象が起こる最小臨界流速に関する定量的な測定を行った。試験により得られた知見は以下のとおり。(1)extrusion現象による流出変位(距離) yは、次式に示すように時間tの平方根に比例し、比例係数Aは、亀裂幅dが大きい程、また、ベントナイト含有比Bcが大きい程大きくなる。y=A(d, Bc) $\sqrt{t}$ クニゲルVI-100\% ベントナイトの場合、亀裂幅0.5mmでは、Aの値として、0.34[mm $\cdot$ h$^{-1/2}$]が得られた。(2)ベントナイトの浸食が起こる最小臨界流速は2$\times$10$^{-5}$[m/s] (630[m/y])程度と判断される。これらの知見を用い、坑道横置方式と処分孔竪置方式の仕様例に基づいて、処分環境における緩衝材の流出量の評価を実施した。処分環境における岩盤亀裂の開口幅は0.5mmとした。その結果、extrusion現象による緩衝材の質量流出率として、1万年間後で0.04$\sim$0.2\%、100万年後で2$\sim$12\%という値が得られた。この流出による影響が最大となったのは、処分孔竪置方式における100万年後の評価結果で、緩衝材の乾燥密度は初期の1.8g/cm$^{3}$から1.5g/cm$^{3}$まで低下し、その透水係数は初期の3.9$\times$10$^{-14}$[m/s]から1.6$\times$10$^{-13}$[m/s]まで増加すると予測される。この程度の透水係数の上昇であれば、緩衝材の止水性に及ぼす流出の影響はあまり大きくないと考えられる。緩衝材の浸食現象に関しては、亀裂開口幅が0.5mmの場合、地下水流速は2$\sim$4$\times$10$^{-4}$[m/s]となり、地下水流速が...
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