一般注記高耐食性金属であるチタンをオーバーパックとして使用する場合,不動態化する全面腐食の環境では腐食速度が非常に小さいため長期寿命が期待できる。そこで,チタンで問題となるのは孔食やすきま腐食などの局部腐食である。この高耐食性金属であるチタンの特徴を生かすためには,局部腐食の起こらない条件で使用することが望ましいので,局部腐食発生臨界条件を把握することが課題となる。局部腐食のうち,すきま腐食は最も緩い条件で生じると考えられているので,すきま腐食発生臨界条件を決定することにより,チタンの処分環境下での可使用条件を明確にすることができる。チタンのすきま腐食発生臨界条件の決定方法としては,辻川らが提唱した再不動態化法が有力な方法として考えられている。この方法で得られた再不動態化電位(ER.CREV)を対象となる金属の当該環境での自然浸漬電位(Esp)と比較することにより,すきま腐食発生の可能性を評価することができる。本報においてはまず、各種チタン材料を用い,pH,温度,雰囲気をパラメータとしたEspの測定及び陰イオン濃度,pHをパラメータとしたER.CREVの測定を行った。その結果、EspはpHの低下とともに,また,窒素ガス吹き込み条件よりも大気中での試験の方が貴になる傾向がみられたが、温度による影響は把握できなかった。ベントナイト中においても大気開放静置条件においてEspの測定を行ったところ,水溶液中でのEspに比べてやや卑な値が得られた。ER.CREVは,溶液中の陰イオン濃度依存性については、Nacl濃度の低下とともに貴になることが確認されたが,HCO$_{3}$$^{-}$濃度やSO$_{4}$$^{2-}$濃度及びpHについては本報での測定範囲内では依存性は認められなかった。さらに,Nacl溶液で測定したEspとER.CREVを比較したところ,かなり低いNacl濃度においてもすきま腐食発生の可能性のあることがわかった。次に,温度と沖合い溶液中のNacl濃度との条件についても再不動態化法を適用し、温度とNacl濃度との間でのチタンのすきま腐食領域を把握した。各実験の測定結果と比較する目的で,EspやER.CREVに関する他の文献調査も行ったが,本報の結果とほぼ整合性のとれることがわかった。
None
一次資料へのリンクURL/PNC-TN8410-96-310.pdf (fulltext)
連携機関・データベース国立情報学研究所 : 学術機関リポジトリデータベース(IRDB)(機関リポジトリ)
提供元機関・データベース日本原子力研究開発機構 : JOPSS:JAEA Originated Papers Searching System