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書誌情報
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- 資料種別
- 図書
- 著者・編者
- 山崎, 勝義
- 著者標目
- 出版事項
- 本文の言語コード
- jpn
- NDC
- 対象利用者
- 一般
- 一般注記
- type:text物理化学の教科書には,エンタルピー,エントロピー,Gibbsエネルギーなどの熱力学関数が解説されている"マクロな"熱力学の章と,(気体)分子運動論,エネルギー準位,分子間相互作用などが解説されている"ミクロな"熱力学,つまり統計熱力学の章がある。後者は,身近に観測できる(多分子系の)熱力学的性質と量子力学に従うミクロな世界の粒子(分子)の力学的性質とが矛盾なくつながっていることを理解するためのきわめて重要な章である。しかし,(化学の)統計熱力学のより深い理解を目指して(物理学の)統計力学の解説書を開くも,まず「小正準集団」や「正準集団」などの集団(アンサンブル)の概念に出鼻をくじかれ,「分子分配関数」や「正準集団分配関数」といった用語が紙面を賑わす頃には混乱の渦中,という経験をもつ初学者は多いのではなかろうか。たとえば,小正準集団は「小」が付くから正準集団より小さい集団だろうと思っていると,正準集団がたくさん集まって小正準集団になってみたり,エネルギーが一定で温度の話が出てこない小正準集団に関する式展開をたどっていたのに,温度Tに依存する分子分配関数が導出されたりと,混乱の種は尽きない。ただし,これらの混乱は,必ずしも読者自身の問題ではなく,テキストの著者自身が混乱している場合もある(ように思える)。 「分布」「配置」など日常的な言葉も,統計(熱)力学の議論においては定義に従って慎重かつ正しく使う必要があり,「巨視状態」「微視状態」などの基本用語も,それらの意味が曖昧にならないように注意する必要がある。また,統計力学のテキストには量子統計(Bose-Einstein統計とFermi-Dirac統計)が必ず解説されているが,物理化学のテキストではMaxwell-Boltzmann統計(Boltzmann分布)のみが論じられ,量子統計が扱われることはほとんどない。このため,化学系(学科)の学生は,これら3種の統計の適用対象や相互の関係を理解する機会を逸しやすく,「気体に対してMaxwell-Boltzmann統計を適用することは厳密には正しくない」という表現によって大きな落胆と混乱を経験することになる。本書は,統計熱力学の基礎を理解し,ミクロとマクロの接続作業を楽しむことを支援するために書かれたMonographである。第10版第4刷