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【書評】
2024年10月に南江堂より刊行された本書は,22,000円(税別)という高価なハードカバー本でありながら,3Dメガネを付録として添え,従来にない学習体験を提供する注目の書籍である.本書には,実際の心臓から得たデータをもとに再構築した三次元画像をアナグリフ(立体視画像)として数多く掲載している.そのボリュームは250ページ以上に及び,普段われわれが診療や検査で目にする心エコー像や実心臓の外観写真なども,理解を助けるため随所に挿入されている.
序文で著者の一人である森俊平氏は,心臓解剖を体系的に理解することの困難さに言及している.医学部生時代に解剖実習で触れた後,卒後に心臓の解剖学的理解を再度深め直す機会はきわめて限られている.さらに,二次元解剖から三次元解剖を導き出す帰納的アプローチには限界があり,臨床画像診断の習得にはむしろ三次元解剖から二次元像を理解する演繹的アプローチが有効であると説く.しかし,これまでそのような三次元解剖を示す成書は乏しかった.こうした課題意識が,本書でアナグリフを積極的に活用する背景となっている.
実際,付録の3Dメガネを装着してページをめくると,まるで心臓標本を手にして観察しているかのような錯覚に陥る.前半では正常心の構造が精緻な立体像で示され,後半では後天性心疾患(大動脈弁狭窄症や僧帽弁閉鎖不全症など)を立体的に視覚化することで,まるで手術中に得られる所見を本の上で再現しているかのようである.特に僧帽弁閉鎖不全症における僧帽弁逸脱など,実際には拍動下でしか観察しえない構造までもが立体化され,外科医にとっても新たな発見となる.
さらに特筆すべきは,先天性心疾患の立体視図である.複雑な心奇形は,熟練した小児循環器専門医がようやく心エコーで診断・分類できるほど難解で,画面をみながら説明を受けても,その構造がどのようにつながっているのか判然としないことが少なくない.本書ではそうした複雑奇形が立体的に示され,頭の中でエコー画像の断面像とリンクさせることで,理解が飛躍的に深まる.評者自身,かつて小児医療センターで研修時代に一度だけ遭遇したことのある「クリス・クロスハート(房室弁が交差する特殊な先天性心疾患)」の立体視画像には,思わず声を上げてしまったほどであった.
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- 資料種別
- 図書
- ISBN
- 978-4-524-20486-1
- タイトルよみ
- リッタイシ デ リカイ スル リンショウ シンゾウ カイボウ アトラス
- 著者・編者
- 森俊平 [ほか] 著
- 著者標目
- 出版事項
- 出版年月日等
- 2024.10
- 出版年(W3CDTF)
- 2024
- 数量
- 270p