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【序文】
国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)によると,わが国の膵がん・胆道がんの罹患数(2021年)は45,819人および21,617人,死亡数(2023年)は40,175人および17,239人であり,これらの疾患に罹患した大部分の患者が完治することなく原疾患により死亡しています.5年相対死亡率は膵がん8.5%,胆道がん24.5%で,いずれの疾患も依然としてきわめて予後不良であり,今なお難治がんの代表疾患とされています.その主な理由は,早期がんの発見が難しく診断時に多くの例で切除不能であることと,再発例および非切除例に対する治療法が乏しく有効な薬物療法が長く確立してこなかったことによります.また,膵NET(神経内分泌腫瘍)は比較的予後良好ではあるものの,最近まで保険適用の得られた標準的な薬物療法がきわめて少ない疾患でした.しかし近年,分子標的治療薬,免疫チェックポイント阻害薬,多剤併用療法などの開発が精力的に進められ,これらのいずれのがん種においても有効な薬物療法が複数導入され,患者の予後が改善されつつあります.私たちの臨床現場において薬物療法の果たす役割はますます大きくなり,また適切な治療実施に対するニーズは臨床的にも社会的にも非常に高くなってきているといえるでしょう.
本書は,患者の状況に応じた薬剤の選び方や使用上の注意点を解説し,臨床現場で最適な治療を提供するための指針となることを目指して作成されました.各章の最初に膵がん・胆道がん・膵NETの治療の変遷や治療アルゴリズムなどの概要を俯瞰できる「総論」を設け,わかりやすく解説しています.続く各項目では,臨床現場で遭遇しやすい疑問点や問題点をとり上げ,それらに適切に対処するための指針を詳細かつ丁寧に示しています.項目冒頭の「ここがポイント」では各レジメンの選択や投与方法など,それぞれの項目におけるエッセンスが簡潔にまとめられています.また,随所に「Specialist’s Note」をちりばめて臨床上の要点や今後の展望に言及し,さらに後半の2つの章では薬物療法を導入するにあたって問題となることの多い合併症への対応方法,薬物療法を導入した後に遭遇しやすい有害事象への対策および症状緩和の方法について解説しています.執筆者の皆様はこれらの臨床現場における悩ましい課題に日ごろから果敢に挑戦し続けておられる,この分野における新進気鋭の先生方です.しかし,そうした方々でさえもなかには回答に苦慮する疑問点や問題点もあったであろうと思われます.丁寧に執筆いただいた先生方にはこの場を借りて厚く御礼申し上げます.
本書が,依然として予後不良な厳しい膵がん・胆道がん,そして膵NETに対峙する先生方の診療に少しでも役に立ち,患者さんの治療成績の向上や生活の質の改善に貢献することができれば,作成に携わった者として望外の喜びです.
最後に,本書を手に取ってくださった皆様のさらなるご発展を祈念するとともに,本書の企画・制作を担当していただいた南江堂編集部の諸氏にこころより感謝申し上げます.
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- 資料種別
- 図書
- ISBN
- 978-4-524-21483-9
- タイトルよみ
- タンドウガン スイガン スイ エヌイーティー ヤクブツ リョウホウ クリニカル ガイド
- 著者・編者
- 奥坂拓志, 池田公史, 上野誠 編集
- 出版事項
- 出版年月日等
- 2025.10
- 出版年(W3CDTF)
- 2025
- 数量
- 143p