並列タイトル等Research on "Ping dan" of MiFu
一般注記米芾(1051~1107)は、「集古字」と呼ばれるほど歴代の名品を学書し、遂に〈平淡〉の境地に辿りついたとされる。本論文は、従来の研究成果を踏まえながら、米芾が〈平淡〉に辿りつくまでの学書過程を、統計学の解析手法を用いて書跡の時代区分を試み(第一章)、過眼した書跡に見出した美意識は如何なるものであったのかを米芾の書論『宝章待訪録』に絞って術語を抽出して考察し(第二章)、その背景にある宋代文人の〈平淡〉の概念は知何なるものであったかを『宋代詩話』から抽出して分類し(第三章)、最後に米芾自身にとって〈平淡〉は如何なる意味を持つものであったかを論じた(第四章)。結論として、統計学の解析の結果、米芾が魏晋の〈平淡〉を自認して、自叙を書いた時期を推定し、その作品の特徴を把握し得た。また米芾の「芾」字、「書」字が、経年的に変化することを確認し、その年代推定の方程式を得た。特定文字に着目し、その特徴から作品の時代を数理統計学的に、数式化、図式化した試みは先行研究に見られない試みである。宋代文人達の用いた〈平淡〉は、六類に分類でき、時代とともに広がったことを論じた。宋代にあっては、〈平淡〉が単なる表現を修飾する形容詞ではなく、「外枯中膏」(孫覿『鴻慶居士文集』に引く蘇軾が陶淵明を評した語)や「漸老漸熟」(周紫芝『竹坡詩話』に引く蘇軾が姪に送った手紙の語)のように作詩の辿りつく境地や人品の風格を表すのに用いられる含蓄に富む審美術語に繋がっている。
米芾の歴代の書家を見下した激烈な評論の背景には、米芾の闘いが有り、また葵京に阿る行為などを見てもわかるように〈俗〉人的であり、世俗の中から抜け出すすことを強く願い、もがき発した評論ではなかったかと結論する。
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受理日(W3CDTF)2016-07-07T04:28:02+09:00
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