並列タイトル等Studies on limited pole placement method considering calculation delay of digital control system
一般注記本論文では,産業用ロボットや光ディスクドライブなどのメカトロニクス制御系を,PID制御器や位相進み補償器などの固定構成のディジタル制御器で実現するときに,演算時間遅れなどのむだ時間要素を考慮して制御パラメータを決定する「限定極配置法」を提案する。ディジタル制御では演算時間遅れやゼロ次ホルダなどのむだ時間要素が必ず存在する。このむだ時間要素のために制御系の次数が高くなり,制御パラメータ数の限定された固定構成制御器で制御系設計を行おうとすると,制御パラメータの数が足りずに試行錯誤の調整が必要になる。このような,制御系の次数に比べ制御パラメータ数が少ない場合について,パラメータ数に相当する極のみ配置する「限定極配置法」を考案した。本手法により制御パラメータ設計の効率化が図れるとともに,むだ時間要素の影響を明らかにできる。本論文ではこの「限定極配置法」について説明すると共に,産業用ロボットおよび光ディスクドライブなどへの適用法を示す。具体的には,産業用ロボットの例として1慣性系をPID制御器で位置制御する制御系について,また光ディスクドライブの例としてボイスコイルを位相進み制御で位置制御する制御系について「限定極配置法」を適用し,いずれの場合も振動性を抑えた制御パラメータが算出されることを確認するとともに,制御性能の限界について解析した。また,光ディスクドライブへの適用時に極を重ねて配置することで,複素零点により低域ゲインを高くできる「高ゲインサーボ」制御器を考案した。この「高ゲインサーボ」の実用化検討を行い,サーボ引き込み失敗率を改善するために初期値補償法を適用し,その飽和対策も行った。さらにシステムLSIに実装するためにマルチレート制御への対応を行い,また一層の高ゲイン化を図るため「2段ブースト高ゲインサーボ」の検討を行った。さらに次世代光ディスクシステムとして検討されている「超多層光ディスクシステム」での制御方式についても検討を行い,限定極配置法の適用で高ゲイン化が図れることを確認した。最後に,限定極配置法により算出される「決定極」の挙動について解析し,産業用ロボットで用いられるPID制御系と光ディスクで用いられる位相進み制御系の違いについて考察した。以上を通して,「限定極配置法」によりむだ時間を考慮した制御パラメータが得られ,試行錯誤の調整が不要となり,見通し良く制御パラメータ設計が行えることを確認した。また,決定極について解析することでむだ時間要素の影響を定量的に把握でき,制御性能の限界について新たな考察を加えることができることを確認した。
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受理日(W3CDTF)2016-08-04T09:59:51+09:00
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