一般注記精度保証付き数値計算は、この四半世紀の間に急速に発展し、今日における数値解析の主題の一つとなっている。最近では純粋数学の一分野である力学系の研究に対して適用されることが多い。特に局所的な理論を精度保証による大域的な軌道計算と結びつけて成果を得ている場合が多い。典型的なものとしてはホモクリニック軌道やヘテロクリニックの検証が挙げられる。 本論文では力学系における平衡点および不動点近傍の解析に使える精度保証法の開発を目的とする。特に吸引的な周期軌道の存在および吸引域に対する精度保証法や、平衡点および不動点に対するLyapunov 関数の構成およびその定義域の確定に対する精度保証法について論じる。 第I 部では研究の背景、精度保証の原理および基本的な手法の紹介、および平衡点近傍の力学系解析の初歩的事項について述べる。第2章では、精度保証の基礎となる区間演算、常微分方程式の解法であるLohner 法と、それに付随する変分方程式の解法であるC1-Lohner 法といった精度保証法の解説を行っている。特に、変分方程式は本論文のほとんどの手法で用いられるため、具体的な計算法まで掲載している。第3章では、力学系の平衡点・不動点に関する安定性解析について触れている。連続力学系、離散力学系それぞれについて載せている。 第II 部では力学系の周期解を扱う。第4章では、関連論文および参考論文で著者らが提案した方法を中心に、周期解の存在に対する精度保証による検証法を記述する。具体的にはPopincare写像を用いた検証法、二点境界値による検証法、および著者らが開発した樋脇・山本の方法について述べている。いずれの方法も孤立した周期解であれば、安定・不安定関係なく用いることができる。樋脇・山本の方法については、ある条件の二点境界値問題と同値になることが示されているが、その条件が他の条件より優位な理由を与えているので、それも含めて解説を行っている。第5章では周期解が吸引的である場合に、その吸引域に含まれる領域を精度保証で特定する方法を、第4章で示した方法と関連させる形で記述する。Poincare 写像を直接用いる方法と、樋脇・山本の方法からの拡張として得られた方法を挙げている。前者は不動点の一意存在を含めた検証法であり、後者は周期の収束性まで保証できる検証法となっている。また、Lyapunov 関数を用いる方法にも言及するが、その詳細については第部に譲る。 第III 部では、まずLyapunov 関数の定義を述べる。本論文で扱うLyapunov 関数は、吸引域に対して構成される通常の定義とは異なり、非吸引的なケースも含むものとなっているためである。またその構成方法について、既存の方法のうち数学的に厳密な結果を与えるものを概観する。その後、第7章で連続力学系に対するLyapunov 関数について、第8章で離散力学系に対するLyapunov 関数について、特に区間演算に基づく精度保証法による構成手法を解説する。これらの方法は、著者らによって開発されたものであり、すでに幾つかの応用例がある。また、連続力学系、離散力学系ともにほぼ同様の手順でLyapunov 関数を構成でき、定義域の確定まで行える手法となっている。 以上の各論については数値例を付し、ここで展開された方法の有効性を検証する。
2016
コレクション(個別)国立国会図書館デジタルコレクション > デジタル化資料 > 博士論文
受理日(W3CDTF)2017-07-03T04:10:06+09:00
連携機関・データベース国立国会図書館 : 国立国会図書館デジタルコレクション