一般注記現在我が国においては,様々な先端技術を駆使した電子機器が開発・生産され流通しており,生活の隅々に使われている。このような電子機器の中で日本国内における市場成長が顕著な製品,具体的には,携帯電話,スマートフォンを取り上げ,市場成長の分析を行う。国内の携帯電話の契約数はロジスティック曲線や非線型回帰式で近似できる。携帯電話契約数の販売開始から増加しているが,年別の契約数が2000年から減少傾向にあり,2010年には,120百万件に達し国民1人に1台契約しており,需要が飽和してきている。この需要の飽和の中で,携帯電話から派生し多機能化したスマートフォンへの“世代交代”が顕在化してきた。 顕在化した世代交代について,旧世代製品のピーク時からの販売台数の減少値を“衰退量”と定義し,衰退量と新世代製品の販売台数との関係を分析する。その結果,携帯電話の衰退量は,次世代のスマートフォンの販売台数によって定式化でき,世代交代のプロセスが明確化される。この世代交代分析は,携帯電話以外に,固定電話,カメラ,ゲーム機の世代交代についても分析する。このような世代交代分析の中で,他社との差別化のため遂次製品展開を行い,意図的に製品の世代交代を早めて消費者の感性を刺激して販売を行う感性消費製品の課題が顕在化してきた。それらは,ゲーム機やスマートフォンであり,“感性消費”製品と言われている。 感性消費とは,コスト,機能,外形,サイズなどを評価して購入する一般的な消費形態(標準消費)に比べて,消費者の嗜好や感性(好き嫌いなど)で製品を購入することを表す。この感性消費製品のプロダクトライフサイクル(以下PLCと記す)を分析し,PLCの構造を明らかにする。PLC分析ではしばしばBassモデルが利用される。しかし,感性消費製品のPLCは,Bassモデルが成立しないPLCが多く,潜在イノベーターや潜在イミテーターを組み入れた新しいモデルを提案する。以上の本研究で扱った成長分析,世代交代分析そして感性消費分析は,製品の販売台数予測や販売戦略立案に役立つ情報を提供する。特に,世代交代分析と感性分析は,新たに市場へ製品をリリースする際の既存製品の撤退も含めた企業戦略の立案に役立つ情報を与えるものである。 本論文の構成は次の通りである。 第1章「緒言」では,本研究の目的,背景,研究の進め方について述べる。 第2章「市場成長分析」では,日本国内で市場の成長が著しい携帯電話やスマートフォンの市場成長について,ロジスティック曲線近似や非線型回帰分析を行う。また,海外の携帯電話やスマートフォンと,インターネット技術の代表技術であるFTTH技術の成長分析を示す。 第3章「世代交代分析」では,固定電話から携帯電話やスマートフォンへの世代交代や各種電子機器のスマートフォンの世代交代などを,それらの販売台数データを用いて定式化して,世代交代する様子を分析する。 第4章「感性消費分析」では,感性消費の代表的電子機器としてゲーム機とスマートフォンとを取り上げて,これらのPLC分析を行う。特に,Bassモデルが成り立たないPLCを持つ製品に対して,新規モデルを提案して分析する。 第5章「結言」では,本研究の成果についてまとめると同時に,今後,新たに検討しなければならない課題について考察を示す。
2017
コレクション(個別)国立国会図書館デジタルコレクション > デジタル化資料 > 博士論文
受理日(W3CDTF)2017-12-04T02:02:48+09:00
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