並列タイトル等Evaluation Methods for Mobile Communication Antennas Using a Reverberation Chamber
一般注記移動通信システムの発展にともない,移動通信用アンテナの高度化が進んでいる.本論文では,移動通信システムで用いられる携帯端末および基地局アンテナの特性評価を簡易に行う方法として,電波反射箱を利用した各種測定方法について検討している.本論文では次の3つの主要な研究について示されている.1つめは,端末用MIMO(Multi-Input Multi-Output)アンテナの評価を目的とした電波反射箱型MIMO-OTA(Over-the-Air)測定システムの研究である.電波反射箱は,遅延波をともなうマルチパス環境を容易に作り出すことができるためOTA測定システムを構築するための有効な装置となる.しかし,電波反射箱内の伝搬環境は一定であり,伝搬パラメータを制御することは困難である.この研究では,より多様性のある特性評価を行うことができる電波反射箱の実現を目指して,伝搬パラメータの制御の可能性について検討している.2つめは,新しいアプローチによるMIMO用基地局アンテナの研究である.現在,MIMO用基地局オムニアンテナとして,垂直偏波・水平偏波共用アンテナが主に使われている.しかし,垂直偏波素子と水平偏波素子が異なるため,それらの指向性を等しくするのが難しく,利得差が大きい場合がある.この研究では,これらの問題を解決するMIMO用偏波合成型オムニアンテナを検討している.また,新しく提案したアンテナのMIMO性能を確認するために,電波反射箱を用いた評価を行っている.3つめは,基地局アンテナの放射効率測定の研究である.小型アンテナの放射効率を測定する方法については様々な方法がある.しかし,基地局アンテナのような比較的大きなサイズで特殊なアンテナの放射効率の測定方法については研究例がなかった.この研究では,基地局アンテナの電波反射箱を用いた放射効率測定法について検討を行っている.本論文は全7章から構成される.第1章では,本研究の背景,目的,および本論文の概要を述べている.第2章では,本研究を通じて測定装置として使用する電波反射箱についての一般的な理論を紹介している.第3章では,実際に構築した4m×2m×2mサイズの電波反射箱について,基本的特性を測定した結果について述べている.ここでは,様々な伝搬パラメータについての周波数特性を詳細に測定し,その特性についてその現象を解釈しまとめており,以降の実験において基礎となるデータを与えている.第4章では,携帯端末の評価を目的とした電波反射箱型MIMO-OTA測定システムについて,電波反射箱内の伝搬環境パラメータの制御について検討している.ここでは,従来の電波反射箱では制御が困難であった,交差偏波電力比(XPR)と到来波分布が変更可能な二重電波反射箱を提案し,その伝搬パラメータの制御法について実験により確認を行っている.その結果,二重電波反射箱は,従来の電波反射箱の機能に加えて,XPRと到来波分布を同時に制御することが可能であり,より有用性の高いMIMO-OTA測定システムとなり得ることを示している.第5章では,携帯電話基地局アンテナとしてMIMO用偏波合成型オムニアンテナを新しく提案し,電波反射箱によるチャネル特性の評価を行っている.ここでは,提案アンテナのシミュレーション結果および試作結果を示し,さらに,提案アンテナのMIMO性能評価のために電波反射箱を使って2×2MIMO通信時のチャネル容量を測定している.その結果,提案アンテナは,各アンテナ素子の指向性が同一であるという利点をもち,従来の水平偏波・垂直偏波共用オムニアンテナと同等のMIMO性能を有していることを確認している.第6章では,屋外用の比較的大きな携帯電話基地局アンテナの放射効率を,電波反射箱を用いて測定する方法について検討している.ここでは,周波数共用偏波共用セクタアンテナの製品を測定し,測定値の妥当性の確認を行っている.また,測定精度を向上させる方法についても検討を加えている.最後に第7章では,本研究を総括している.本研究の成果により,電波反射箱が高度化する移動通信用アンテナの特性評価のためのツールとして有力な候補となり得ることを示している.
2013
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受理日(W3CDTF)2018-01-02T17:18:43+09:00
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