一般注記本論文では、高齢者介助における介助技術の基本となる、移乗介助と食事介助に焦点を当てて動作解析と視線解析を中心に、これまで熟練の介護職員が暗黙知で実践してきた介助技術のコツを提唱し、その実証をもって介助のコツを具現化、可視化することを目的としている。 高齢者の移乗介助とは、トイレでの排泄介助や浴室での衣類の着替えや洗身介助、食事介助を行う時など日常生活の様々な場面で「座る」動作が必要となり、日常生活を支援する高齢者介助では基本の介助技術である。研究では、この移乗介助を行う際の介護者の身体の使い方を6つに分類し、そこから移乗介助の基本技術のコツを2つに絞りこむことで、これまで複雑で時間がかかっていた移乗介助技術の指導に新しい視点を盛り込んでいる。補助道具の使用方法についても言及しており、介護者と要介護者双方にとって身体的負担の少ない移乗方法のコツについても検証している。 食事介助技術の目線解析においては、多くの介護職員が危険であると認識している食事介助場面の目線解析と質問紙調査法を用いて、新人から熟練介護職員の食事介助における意識と実際の注視結果のかい離について実証しており、経験年数の浅い介護職員は、言葉だけの指導では望ましい行動の理解が困難であるとの結果を導き出しており、食事介助の指導を行う際には、要介護者の口や顔を見るという注視だけでなく、そのタイミングやバランスについても指導を行う必要があるとの結果を実証した。 高齢者の移乗介助と食事介助の早期に安全な技術習得は、高齢者にとって健康寿命の延長につながるだけでなく、不要な介護事故を抑制することで介護職員にとっても安心して高齢者介助を実施できる職場環境作りにも繋がることが期待される。本研究の成果は超高齢社会となった日本にとって、介護が必要な多くの高齢者にとっても、介護現場で就労する介護職員にとっても今後ますます重要性が増していくものである。
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受理日(W3CDTF)2019-02-03T04:35:56+09:00
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