博士論文
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多群質問紙調査に対する統計的手法の開発
- 国立国会図書館永続的識別子
- info:ndljp/pid/11479137
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一般注記:
- 多群質問紙調査とは、相関の高い質問項目を多数含むような、複数の群で構成された調査票を用いて実施する調査のことである。学術的な研究領域においては、一般に先行研究をレビューし、目的や仮説を明確にした上で調査を計画する。その調査を実施した後、仮説の検証を行うことが研究のひとつの流れである。しかし、企業にお...
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書誌情報
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デジタル
- 資料種別
- 博士論文
- 著者・編者
- 川﨑, 昌
- 出版年月日等
- 2017-03-24
- 出版年(W3CDTF)
- 2017-03-24
- 授与機関名
- 目白大学
- 授与年月日
- 2017-03-24
- 授与年月日(W3CDTF)
- 2017-03-24
- 報告番号
- 甲第14号
- 学位
- 博士(経営学)
- 博論授与番号
- 甲第14号
- 本文の言語コード
- jpn
- 一般注記
- 多群質問紙調査とは、相関の高い質問項目を多数含むような、複数の群で構成された調査票を用いて実施する調査のことである。学術的な研究領域においては、一般に先行研究をレビューし、目的や仮説を明確にした上で調査を計画する。その調査を実施した後、仮説の検証を行うことが研究のひとつの流れである。しかし、企業においては必ずしもこのような手順で調査を実施できるとは限らない。企業が実施主体となって行う調査であれば、その結果が実務に役立つことが望ましい。実務に有効な調査とは、ビジネスの機会を逸しないタイミングで信頼できるデータが取得でき、かつ、データ解析後はその結果に基づき施策提案を導き出せるものである。さらに、調査データの定量的な解析結果が視覚的にもわかりやく示されれば、経営の意思決定の客観的な判断材料となり得る。そこで本研究では、実践的な多群質問紙調査の解析においても活用可能な統計的手法の開発を目的とした。開発した手法は、多重共線性の問題を回避し、かつ従来の解析手法に残された課題を達成できる、汎用性、視認性の高い、提案型の方法論であった。選抜型多群主成分回帰分析というこの手法は、基本的な多変量解析の組み合わせで実行でき、その一連の流れに沿って解析を行えば、解析結果に基づく施策提案の方向性を導き出すことができるものである。現在、企業では、多群よりなるデータを取得するための各種調査が盛んに行われている。しかし、その解析は総じて記述統計に留まることが多い。よって、本研究で開発するデータ解析のための統計的手法は、学術研究の領域のみならず、企業の経営実務にも寄与できる「汎用性」の高い手法とした。さらに、わかりやすい提案とするために、近年の統計ソフトウェアのグラフィカルな機能を用い、「視認性」の高い方法を実現した。それによって、解析結果に基づく対策の方針を示唆する「提案型」の解析アプローチを一般化することができれば、客観的データに基づく経営実務の意思決定が多くの人や組織にとって身近なものとなる。これが本研究の意義である。第1章では、研究背景を概観した後、調査および解析の歴史的変遷や多変量解析の種類についてまとめ、従来からある3つの解析アプローチ:①重回帰分析、②従来の主成分回帰分析、③SEM Structural Equation Modeling;構造方程式モデリングの特徴を整理した。その上で、従来の解析手法に残された課題が達成可能となる多群質問項目の調査に対する統計的手法の開発という研究目的を設定し、その意義を示した。従来の解析手法に残された課題は以下の通りである。①重回帰分析では、相関の高い質問項目が多く含まれる多群質問紙調査において、多重共線性の問題が生じる可能性が高く、この問題が生じた場合はそれを回避する解析方法を検討しなければならない。②従来の主成分回帰分析は、①重回帰分析で生じた多重共線性の問題を回避する手法のひとつである。しかし、すべての説明変数項目の主成分をとり、その主成分を用いて主成分回帰分析を行う従来の手法では、結果として目的変数をよく説明する主成分とそうではないものが混在してしまう事態となる。その場合、解析による調査対象の実態把握が不十分になり、解析結果に基づく有効な対策が打てなくなってしまう。③SEMは人間の複雑な行動モデルの仮説を検証したい場合などに用いるには有効な手法である。しかし、仮説モデルの構築やその吟味には時間を要し、研究以外の実務領域で汎用的に活用するには難易度が高い手法といえる。また、背後に潜む潜在因子の複雑な関係性まで捉えた現状把握ができたとしても、その結果に基づき、具体的な施策提案を導き出すことが困難である。第2章では、多群質問紙調査の特徴、人や組織を対象として実施する多群質問紙調査の層別分類やばらついたデータの取得方法、多群質問紙調査の解析時に生じる多重共線性の問題などの留意点をまとめた。第2章1節は層別分類について整理した。人や組織を対象とした多群質問紙調査では、その母集団特性を把握するための層別が重要となる。なぜなら、人間は一人ひとりが違う価値観、意思、思想、信条などを持っているため、母集団の傾向がすべて同じではなく、そこに層が形成されていると考える方が自然だからである。この層別の基盤は、対象者の特徴を示す属性分類である。またさらに、複合的な層別を見出すためには、近年のコンピュータソフトウェアを活用し、統計的手法を用いることが効果的な手段である。しかし、統計分類を用いるだけでは調査対象者の回答や実験結果の類似性による分類に留まり、解析や設計を行う上で不十分であることも多い。そのため本研究では、専門的知識や経験などの固有技術を統計分類に照らし合わせて意味づけを行うことで、属性による層別を見出すという事後層別の手法を提示した。第2章2節では、ばらついたデータを取得するための工夫点をまとめた。多群質問紙調査において、原因系と結果系の回答がどちらも似たような評価になってしまうと、取得したデータにばらつきがみられず、回帰分析結果の寄与率が上がらなくなるということが起こり得る。こうした事態を避けるには、回答者に評価してもらう2つの視点の評価項目を対応させる形で調査票を設計し、調査を行うことが望ましい。そこで、調査において、回答者が過去-現在-未来という時系列変化の中で対応している、もしくは比較したい調査対象が2種類以上ある場合に用いられる、質問項目が対になった対応のある調査票の活用について分類・整理し、ばらついたデータ取得や対応のあるデータの差分や積み上げを用いる解析手法を示した。第2章3節では、多群質問紙調査や質問項目数の多いインターネット調査の解析時に起こり得る多重共線性の問題を回避するための方法論:主成分回帰(Principal Component Regression)、PLS回帰(Partial Least Squares Regression)、リッジ回帰(Ridge Regression)について特徴をまとめた。第3章では、従来の解析アプローチ:①重回帰分析、②従来の主成分回帰分析、③SEMに残された課題を達成するため、新たな解析アプローチ:④選抜型多群主成分回帰分析、⑤階層型主成分回帰分析、⑥主成分SEMの特徴をまとめ、これらの6つの解析手法を比較した上で、④選抜型多群主成分回帰分析の有効性を示した。有効性の検討は、事例を用い、リッジ推定による解析結果との比較・検証により行った。④選抜型多群主成分回帰分析が本研究で開発した手法である。解析手順としては、最初に目的変数に設定するYを定め、そのYと説明変数Xの各項目の相関を確認する。このときの相関が一定レベル以下の説明変数は分析から除外し、一定レベル以上の説明変数のみを選抜して解析を進める。次に、各群で選抜された説明変数の主成分分析を行い、そこで抽出された主成分を用いて重回帰分析を実行する。このように、まず目的変数との相関を確認するため、目的変数と関連の小さい説明変数が混じることがない。そのため、従来の主成分回帰分析に残された課題であった、目的変数と関係の薄い説明変数を合成してしまうことは回避できる。また、同じ群内の主成分同士は独立の関係となり、相関の問題が生じることがないため、多重共線性の問題も起こりにくい。さらに、解析結果として選択された各群間の主成分同士に相関の問題が生じなければ、ベクトルに基づき施策提案の方向性を導き出すことができる。しかし、選抜型多群主成分回帰分析結果のVIFに2.0を超えている変数があれば、他群の主成分との相関の高さに問題があると考えられる。この場合、⑤階層型主成分回帰分析、もしくは、⑥主成分SEMを試みる。⑤階層型主成分回帰分析は、モジュールという概念定義を参考に、質問項目の群編成に階層を持たせたアプローチである。階層構造を整理するために、主成分回帰分析を繰り返し行うことになるが、最終的には④選抜型多群主成分回帰分析と同様、ベクトルによって提案の方向性を指し示すことができる。よって、選抜型多群主成分回帰分析において多重共線性の問題が生じた場合、調査実施後の解析結果を段階的に整理し、企業実務における意思決定や提案を速やかに行いたいときは、この手法が有用である。しかし、主成分回帰分析を繰り返し行う必要があり、その結果の解釈は難易度が高いといえる。⑥主成分SEMは、背後に潜在因子があることを想定した仮説モデルを構築し、解析を行うものである。仮説モデルの適合度指標は概ね良好な値を示したとしても、複雑な概念構造になった場合は解釈が困難になり、企業としての施策提案を導き出すことが難しい。企業で調査を行う場合は、理論の一般化よりも意思決定や施策提案につなげられることが優先される。こうしたことから、選抜型多群主成分回帰分析で多重共線性の問題が生じた後の選択肢として、主成分SEMは普遍的な知見を見出そうとするとき、一方の階層型主成分回帰分析は具体的な施策を導き出そうとするとき、というように目的に応じて使い分けることが推奨される。選抜型多群主成分回帰分析でVIFが2.0を超えていた場合、⑤、⑥以外の手法として、固有技術的に調査票の群を再編成することが可能であれば、群を再編成後に再分析することも考えられる。群を再編成した上で、再度、④選抜型多群主成分回帰分析を行えば、そもそも多重共線性の問題は生じない可能性が高い。またこのときは、再分析結果に基づき、ベクトルを用いた施策提案の方向性を導き出すことができる。これらの解析手法をフロー図に示した上で、第3章1節では、多群質問紙調査における選抜型多群主成分回帰分析の活用を提案した。選抜型多群主成分回帰分析は、基本的な多変量解析の組み合わせで実行できる汎用性を備え、解析結果に基づき、ベクトルを用いた視認性の高い提案指針を示唆できるため、特に企業実務での活用が期待される。第3章2節では、事例で取得したデータを選抜型多群主成分回帰とリッジ回帰という方法論に基づき解析し、その結果を比較した。リッジ回帰では、説明変数は同一直線上にあるときに代替の推定方法を提供するため、予測に使用されるモデルでは、解釈の明快さ、設計の容易さ、MSEの値が小さいことが必要とされる。選抜型多群主成分回帰分析のMSEは、比較する他の解析手法のMSEの値よりもっとも小さく、その値はリッジ推定量を用いたMSEとも大きな差異がみられなかった。このことから、選抜型多群主成分回帰分析の解析結果の信頼性が確認でき、方法論としての有効性が示された。第4章では、選抜型多群主成分回帰分析をA社の事例に適用した。事例では、従業員の職務意識に影響を与えるキャリア支援施策について解析を行い、その解析結果に基づき、提案の方向性を示唆した。事例では、厚生労働省が開発したキャリア健診という多群質問紙調査の解析に選抜型多群主成分回帰分析を適用したことで、調査対象の現状把握とその考察に留まらず、解析結果に基づく施策提案の方向性を導き出すことができた。このとき、因子負荷量図上に合成ベクトルを作図し、対策のポイントを視覚的にもわかりやすく示した。これらの施策をさらに確実な実行に移すためには、質問紙実験やその結果に基づく合意形成を図るための統計的アプローチを組み合わせた施策設計の統計的手法も存在する。選抜型多群主成分回帰分析による解析結果に基づき、2回の質問紙実験を行った上で人事施策を設計したケーススタディは付録にまとめた。第5章では、本研究で開発した方法論の汎用的活用、本研究のまとめと結語を述べた。本研究では、学術研究だけでなく、経営課題の達成を目的とした実践的な多群質問紙調査においても活用できる、汎用性、視認性の高い、提案型の方法論であることを考慮し、統計的手法を開発した。選抜型多群主成分回帰分析というこの手法は、多群よりなるデータの解析時に生じやすい多重共線性の問題を回避し、かつ、従来の主成分回帰分析に残された課題を達成できるものである。また、多変量解析の基本的手法の組み合わせを一連の流れに沿って行えば、誰もが視覚的にわかりやすい提案を導き出せるという特徴をもつ。そのため、この手法は、経営実務の意思決定を支援する客観的データの生成に活用できるものである。この方法論が広く活用されることで、多群よりなるデータの解析とその結果に基づく意思決定が、多くの人や組織にとってより身近なものとなる。2016年度
- 国立国会図書館永続的識別子
- info:ndljp/pid/11479137
- コレクション(共通)
- コレクション(障害者向け資料:レベル1)
- コレクション(個別)
- 国立国会図書館デジタルコレクション > デジタル化資料 > 博士論文
- 収集根拠
- 博士論文(自動収集)
- 受理日(W3CDTF)
- 2020-04-06T03:04:11+09:00
- 作成日(W3CDTF)
- 2020-03-17
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