一般注記【背景】これまでに舌機能評価として, 舌運動測定が行われてきたが, 複雑な舌運動の運動解析は困難とされてきた. そのため食塊量の違いなどによる嚥下時舌運動を解析した研究は少ない. そこで我々は舌運動と舌圧を同時測定することで包括的な舌運動機能評価が可能な実験系を構築した. 【目的】水嚥下時の舌運動と舌圧を同時に測定し, 食塊量の違いが, 舌圧発現および舌運動に及ぼす影響を評価することとした. 【方法】被験者は健常成人16 名(平均年齢29.5±3.8歳)(男性12名女性4名)とした. 舌圧測定には5 ヵ所の感圧点(Ch.)を持つ舌圧センサシートシステムを使用し, 硬口蓋にセンサシートを貼付した. 舌運動には電磁アーティキュログラフを使用して, 舌前方部と後方部の2点にマーカーを貼付して測定を行った. 水3ml および10ml を口腔底に注入し嚥下を指示した. 舌運動軌跡と舌圧の同期波形図を製作し, 嚥下時舌運動パターンの定性的・定量的評価を行った. 解析項目としては1. 舌運動の定性的評価, 2. 舌運動の定量的評価, 3. 舌圧の定量的評価, 4. 舌運動と舌圧との時間的関連性とした. 【結果】嚥下時の舌の回転運動が観察され, その頻度は前方よりも後方, 10mlよりも3ml で有意に高かった. 上下移動距離・最大速度ともに10ml で有意に大きかった. 3ml では舌正中前方部, 舌正中中央部と舌周縁部の舌圧Onset に対して舌後方部の口蓋接触開始時間が有意に遅延したが, 10ml では舌正中前方部の舌圧Onset に対してのみ口蓋接触が有意に遅延しており, 食塊量によって舌運動と舌圧発現の順序が調整されている様子が示された. 【結論】嚥下時舌運動は食塊量の変化に伴って移動距離や速度を変化させることで舌圧発現を変調させていることが明らかとなった.
新大院博(歯)甲第460号
コレクション(個別)国立国会図書館デジタルコレクション > デジタル化資料 > 博士論文
受理日(W3CDTF)2020-09-07T06:04:08+09:00
連携機関・データベース国立国会図書館 : 国立国会図書館デジタルコレクション