並列タイトル等Identification of miRNAs in exosomes from human glial hybrid cell line with cytoplasmic alpha-synuclein inclusions
一般注記近年,多系統萎縮症 (multiple system atrophy; MSA) の診断バイオマーカーとして,患者血液や脳脊髄液中のマイクロ RNA (micro RNA; miRNA) が報告されている.しかし,早期診断の為には,罹患細胞の細胞死による副次的な変化を除外する必要がある.そこで,罹患細胞が細胞死に至る前の病態を反映した miRNAを解析する試料として,エクソソーム (exosome) に着目した.エクソソームは,細胞外小胞 (small extracellular vesicle; sEV) の 1 種であり,内部の物質は分泌細胞の環境を反映する.MSA では,主にオリゴデンドロサイトにて α シヌクレイン陽性の細胞質内封入体を認めることから,まず,この病態を反映する細胞モデルを作成し,その細胞由来のエクソソーム内に特徴的なmiRNAが存在するか否かを検証することを目的とした.ヒトオリゴデンドロサイト系培養細胞において,αシヌクレイン遺伝子と線維化 α シヌクレイン蛋白を共導入し,αシヌクレイン陽性細胞質内封入体を形成した.その際の細胞培養培地から,超遠心法を用いてエクソソームを含む sEV分画を分離した.αシヌクレイン陽性封入体形成の有無の 2 群において,sEV 分画から抽出したエクソソーム RNA について,マイクロアレイにより,2,578 種類の miRNA の発現量を解析した.両群のいずれかで発現を認めた miRNA は1,036 種類あり,両群間で発現量に統計学的有意差を認めた miRNA は 117 種類であった.これらを用い階層クラスター分析を行ったところ,αシヌクレイン陽性封入体形成の有無に分類できた.また,αシヌクレイン陽性細胞質内封入体形成時に,2 倍以上の発現変化を認めた miRNA は 29 種類あり,28 種類が増加,1種類が減少していた.この内,MSA 患者体液中で発現変化が報告されており,挙動が一致していたのは,発現が増加したhsa-miR-663a のみであった.さらに,MSA患者において発現が低下するgamma aminobutyric acid A receptor associated protein に対するmiRNA2種類をはじめ,オートファジー障害やαシヌクレインのミスフォールディングとの関与が示唆される miRNA の増加など,MSA 病態の解明につながる可能性のある miRNA の変化を見出した.本研究では,ヒトオリゴデンドロサイト系培養細胞において,αシヌクレイン陽性細胞内封入体形成時に,エクソソーム内に特異的な miRNA 発現プロファイルがあることを見出した.この変化は,今後,ヒト患者組織や体液検体にて検証する必要がある.また,本研究において確立したエクソソームの分離およびエクソソーム RNA の抽出手技は,様々な検体に応用が可能であり,MSA 以外の神経変性疾患も対象としうる.この手技を用い,疾患特異的な診断バイオマーカーの開発や病態解明を進めていくことが期待される.
新大院博(医)甲第910号
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受理日(W3CDTF)2020-09-07T06:04:08+09:00
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