ベニバナ Carthamus tinctorius L.由来色素 カルサミンの分子組成と発色に関する研究

• 資料種別: 博士論文
• タイトル: ベニバナ Carthamus tinctorius L.由来色素 カルサミンの分子組成と発色に関する研究
• 著者・編者: 佐々木, 麻衣子
• 著者標目: 佐々木, 麻衣子
• 出版年月日等: 2021-01-26
• 出版年（W3CDTF）: 2021-01-26
• 並列タイトル等: Studies on molecular structure and mechanism of green metallic luster of carthamin from safflower Carthamus tinctorius L.
• 授与機関名: 東京工芸大学
• 授与年月日: 2021-01-26
• 授与年月日（W3CDTF）: 2021-01-26
• 報告番号: 甲第56号
• 学位: 博士（工学）
• 博論授与番号: 甲第56号
• 本文の言語コード: jpn
• 件名標目: ベニバナ; 色素カルサミン; カルサミン; Carthamus tinctorius L.; safflower; Carthamin
• 対象利用者: 一般
• 一般注記: 世界は色であふれている．進化により視覚を獲得し，識色機能を有した人類にとって，色は科学的にも文化的にも重要な因子であった．有史以前から身分や政治力を示すために用いられた．科学領域では波動と粒子の二面性を有する光の色は波長により色調が決まり，散乱，反射，吸収（透過），発光，光電子の放出などの現象が様々な色彩を生み出す． 短い波長の電磁波（γ-線）から紫外線，いわゆる我々が識色できる範囲である可視光線，赤外線，はてはマイクロ波，ラジオ波まで広い領域にわたる電磁波を用いた分光分析があり，目的成分との相互作用によって得られる電磁波の信号の強さから定量を，固有の波長の値から定性を行う日常的品質分析手段となっている． それぞれの電磁波波長領域で特徴ある分析法となり，展開している．分離分析の定番であるクロマトグラフィーは，植物葉緑成分の分離から始まった．固定層と移動相を用いるすべての手法がギリシャ語の色； chroma に起源をもつことは興味深い． 他分野においても「色」は研究者の興味をひきつけてきた．電磁波と相互作用する「分子」あるいは「元素」が必要である．「色」も化学物質である． ゆえに天然物化学においては様々な色が分離精製され，分子構造解析と呈色あるいは発光機構が研究されてきた．人工的にも多くの色素が合成されている．一般に，赤色色素，青色色素は黄色色素に比べて分離精製が難しい． 赤は希少である． 典型的例が紅花色素である． ベニバナ(safflower;学名 Carthamus tinctorius L.）はエチオピアからエジプト付近が原産地とされる植物で，花弁に多種の色素が含まれる． 欧州，中国， 日本にまで伝達し，漢方薬としても用いられてきた．植物繊維を使用した精製により黄色，赤色の分離が行われ，染料や化粧品として用いられてきた．全色素中1％以下の赤色色素カルサミンは紅と呼ばれ，固体では緑色光沢を有する． 世界の広範囲においてカルサミンを用いた文化財が存在する．カルサミンの化学的研究は1840年に始まり，1979年に有機化学的分子骨格構造が確定した． 2018年にはキラリティや糖のアノメリック構造も判明し，全合成も報告された．カルサミンは1分子に2つのグルコースを有するβ-Cグリコシドである．エノール基，カルボニル基，フェノール基，二重結合を有する擬対称性分子で分子量910である． 光熱脆弱性を有し，合成は報告されても，円偏光二色性，可視吸収スペクトル，薄層クロマトグラフィーによる単一性および同一性が報告されているだけで，いまだ質量スペクトルおよび核磁気共鳴におけるシグナルの完全帰属は報告されていない． 本研究では，カルサミン研究のさらなる展開のためには有機分子骨格のみならず，NMR，MSによる同定と化学的性質の明確化が必要と考え，測定条件確立と帰属を目的とした． 伝統的精製法と実験室での伝統的精製法と実験室での化学精製法を精査し，取り扱い方法を検討した．有機化学的分析法以外に，無機元素の検出を積極的に行うため，蛍光X線分析，原子吸光分析を取り入れた． その結果，真空乾燥カルサミンカリウム塩は遮光条件下年単位で安定であることが判明した． 第一に錯体もそのまま検出できるNanoESl質量分析法により，カルサミンカリウム塩のピークを確定した．フリーのカルサミンは存在していない． 第二にDMSO-d6溶媒中で，1次元 1H, 13C-NMR, 2次元COSY, DOSY, HMQC, HMBC, NOESY法を駆使して全水素と全炭素のシグナル完全帰属を達成した．このことにより，カリウム塩になっているのは 3位の水酸基であることも判明した．第三にこれまでの伝統的精製手法における日本特有の原料，紅餅（発酵ベニバナ花弁乾燥物），アルカリ成分である灰，酸成分である果実抽出成分の分析を行い，アルカリ主成分はカリウム，酸成分はリンゴ酸とクエン酸混合物であることを確定した．各pH等の条件も数値化し，伝統的精製法の化学的実験法への翻訳ができた．第四に，ナトリウムをアルカリ成分として同様に精製すると，ナトリウム塩，フリーカルサミン，カリウム塩が混在することがNMRと質量分析および原子吸光分析で確認された． 実験室精製物の不安定性が矛盾なく説明できた． 第五にカルサミンカリウム塩を黒色基盤に塗布した金属光沢を有する緑色色素膜は白色入射光に対して550nm付近を極大とする全反射スペクトルを示した．反射極大波長の角度依存性は現れず，主に色素膜入射側界面で生じ，直線偏光成分が少ないことから，緑色光沢は金属的反射であることを明らかにした．全合成されたカルサミンは光沢を有するが緑色ではない．塩がカルサミンの色，反射，安定性に関与している．3次元構造まで確定には至らなかった． 単結晶生成やコンピューター分子軌道計算がさらなる展開を示すに違いない．しかし，ここで得られた結果は，カルサミン研究の大いなる飛躍に寄与すると考えられる． 酵素などの生体成分において，微量無機元素が機能発現に重要な役割を担っているが，カルサミンにおいても3'塩が安定性と「色」に影響を与えていること，無機，有機両面の分析の必要性を指摘したい．; There are many kinds of color in the world. The color has also impacted the science of chemistry and the science of chemistry has impacted the role color in society. The wool, cotton and silk have been dyed with naturally occurring dyes. Red and blue colors were always more difficult to obtain than shades of yellow. Safflower is primarily known for its sumptuous pink or red colors. Safflower petals contain yellow and red pigments, which are metabolized from white quinocalcon through yellow pigments and finally to red pigment carthamin. Carthamin is the only red pigment, less than 1% of total pigment containing in safflower petal. The safflower originated in Asia Minor and come via Egypt to central Europe. In Japan, a red pigment derived from safflower was used as a cosmetic red, named as Beni. The red that shows a green luster called "Sasairo-beni (Bamboo colored red)" which was known as the evidence of high quality. The first report of rare red pigment from safflower has been submitted in 1840. The molecular formula was determined in 1979. Carthamin is a C glycoside structure with two glucoses. Then, total synthesis has been reported. However, the total assignment of 1H, 13C-NMR and mass spectra of carthamin has not been reported. I paid attention to carthamin potassium salt which is yearly stable with some treatment. Assignments were made with one dimensional NMR and COSY, HMQC, HMBC, NOESY and DOSY spectra. Carthamin potassium salt were purified talking by improved Japanese traditional method without any column chromatography. The results of fluorescence X-ray, atomic absorption analysis and NanoESI-MS spectroscopy supported that high purity and potassium salt at 3'position of carthamin. Green metallic luster was observed from the carthamin potassium salt film immobilized on the black base. A reflection spectrum maximum around 550nm was not affected on the angle, which indicated that the green metallic luster is similar to the reflection of metallic materials.; 2020
• 国立国会図書館永続的識別子: info:ndljp/pid/11977230; https://dl.ndl.go.jp/pid/11977230
• コレクション（共通）: 障害者向け資料
• コレクション（障害者向け資料：レベル1）: テキストデータ
• コレクション（個別）: 国立国会図書館デジタルコレクション > デジタル化資料 > 博士論文; https://dl.ndl.go.jp/collections/A00014
• 収集根拠: 博士論文（自動収集）
• 受理日（W3CDTF）: 2022-01-10T16:22:37+09:00
• 作成日（W3CDTF）: 2021-11-29
• 記録形式（IMT）: application/pdf
• オンライン閲覧公開範囲: 国立国会図書館内限定公開
• デジタル化資料送信: 図書館・個人送信対象外
• 遠隔複写可否（NDL）: 可
• 掲載誌（URI）: http://id.nii.ac.jp/1245/00002083/
• 連携機関・データベース: 国立国会図書館 : 国立国会図書館デジタルコレクション; https://dl.ndl.go.jp

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2023-09-04 再収集