一般注記2021年度
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目的:痛みは感覚的な側面だけでなく、情動的や認知的な側面を有することが知られており、特に慢性疼痛患者では社会・心理的な影響を多分に受けている。そのため、慢性疼痛患者に対する鍼灸治療の有用性を検証するには、被暗示性のような心理的影響について考慮する必要がある。そこで、慢性腰痛患者に対する鍼灸治療の効果と被暗示性の関係性について検討した。方法:対象は 3 ケ月以上慢性的な腰痛を待つ患者 17 名(45.0±24.0歳)を対象に、被暗示性を測定したのち、2 週に 1 回の頻度で 7 回の鍼灸治療を行った。評価は鍼灸治療 1 回目と 7 回目に VAS・RDQ・PCS・ACS を測定した。また VAS に関しては、1・3・5・7 回目の治療前後で評価を行った。結果:慢性腰痛患者 17 名のうち、被暗示性の高い患者は 7 名、低い患者は 10 名となった。この 2 群で鍼灸治療の効果を比較したところ、治療前後の VAS 効果(短期効果)に関しては両群とも痛みは軽減するものの、各治療前後とも 2 群の間に有意な差は認められなかった。一方、1 回目と 7 回目の変化(長期効果)に関しては、被暗示性の高い患者のみ VAS・RDQ・ACS などで経時的に変化が認められるものの、群間に関しては有意な差はなく、RDQのみ2群に多少の差が認められた(p=0.088)。考察:慢性腰痛患者に対して鍼灸治療の効果と被暗示効果の関係性を検討したところ、短期効果に関しては鍼灸治療の治効機序が末梢・脊髄レベル中心のため、被暗示性の影響を受けにくく、被暗示性の高低で効果に差は認められないが、長期効果に関しては鍼灸治療の治効機序が脳レベル中心であるため、被暗示性の高い患者では脳性の鎮痛に影響がある背外側前頭前野の活性が高く、被暗示性の低い患者に比べて治療効果が得やすい可能性が示唆された。しかしながら、今回は症例が少ないこともあり、その可能性を示唆するためにはさらなる症例数の追加が必要であると思われた。
コレクション(個別)国立国会図書館デジタルコレクション > デジタル化資料 > 博士論文
受理日(W3CDTF)2022-05-09T11:57:37+09:00
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