並列タイトル等Frequency distribution of electromyography waveform amplitude and waveform number of masseter muscle during sleep in patients with clinical diagnosis of sleep bruxism
一般注記これまで臨床において,睡眠時ブラキシズム(SB)は歯ぎしり音の指摘や,歯の咬耗などの臨床所見により診断・評価されてきたが,その評価には客観性に乏しいという欠点があった.そのような状況に対し,ウェアラブル筋電計を用いた筋電図検査が可能となり,客観的,定量的にSBを診断・評価することが可能となった.筋電図によるSB筋活動は,主に大きさや波形持続時間が一定閾値以上の波形の数で表され,評価されてきた.一部の研究では,それらの閾値以上の波形の大きさ(振幅)も併せて報告されたものもあったが,波形の全体像を分布表示で表したものは非常に少なかった.そこで本研究はウェアラブル筋電計により測定した睡眠時咬筋筋電図波形全体について,その振幅や発現数の度数分布実態を明らかにし,SBにより発揮される力の大きさや頻度を評価するための指標を検討することにした.被験者はSBの臨床診断を受けた外来患者40名とした.被験者の自宅にて超小型ウェアラブル筋電計FLA-500-SD(株式会社フルサワラボ・アプライアンス)を用いて,睡眠時咬筋筋活動を測定した.筋電図解析条件は,バースト抽出閾値を基線の2倍以上かつ300%MVC未満,バースト持続時間条件を0.25秒以上,60秒未満とした.被験者毎のバースト数/hの度数分布では,バースト数/hが20回より大きく30回以下の被験者が9人で最も多かった.ブラキサーに該当するエピソード数/h(≧5.5回/h)の被験者28人と,非ブラキサーに該当するエピソード数/h(<5.5回/h)の被験者12人のそれぞれの波形振幅平均値は,ブラキサーで平均値37.0%MVC,非ブラキサーで平均値38.0%MVCであり両群間には有意差は認められなかった.また,被験者毎の波形振幅平均の度数分布では,波形振幅平均が15%MVCより大きく20%MVC以下の被験者が最も多く10人だった.被験者40人の全バーストの波形振幅の各階級における平均の度数分布は,6~10%MVCで分布のピークを迎え,その後徐々に分布が小さくなる傾向を示した.ほとんどの被験者が,SB時の波形振幅の度数分布の割合の平均のグラフに近似した度数分布を示したが,大きな%MVC値に分布がシフトしていたものも見られた.今回の研究結果により,SBに対する睡眠時筋電図検査を行う際には,筋電図の波形振幅の度数分布を表示することにより,個々の被験者のSB時に発揮される力の大きさの評価をより客観的,定量的に行うことができる可能性が示された.また,バースト数,エピソード数の分布表示についても,個々の患者の検査結果が,全体の分布の中のどこに位置するかを認識し,患者のSB回数の重篤度を把握するのに役立つものと思われた.今回得られた度数分布は,そのようなSB評価の指標のひとつとして有用と考えられた.
(主査) 教授 山口 泰彦, 教授 横山 敦郎, 教授 舩橋 誠
歯学院(口腔医学専攻)
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受理日(W3CDTF)2023-03-03T17:22:27+09:00
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