並列タイトル等Relation between Intra- and Extra-Tumoral Vascular Invation and Lymph Node Metastasis of pT1 (SM) colorectal carcinoma.
一般注記脈管侵襲は病理組織学的リンパ節転移リスク因子であり,内視鏡的完全切除pT1(SM)癌の病理組織学的検索で脈管侵襲が陽性であれば,追加腸切除が考慮される.これまで,脈管侵襲はHE染色標本を用い,腫瘍外間質を対象に評価されてきた.他方,近年では脈管侵襲判定の診断精度と客観性を向上させるため,特殊染色の併用が推奨されている.特殊染色によりこれまで評価対象とされてこなかった腫瘍内脈管侵襲も同定される可能性があるが,大腸pT1(SM)癌で,腫瘍内脈管侵襲がリンパ節転移リスク因子であるかどうかは明らかにはされていない.本研究では,リンパ節郭清がなされた外科切除大腸pT1(SM)癌313例を対象に,特殊染色標本により同定される脈管侵襲を腫瘍内・外とに分け,腫瘍内脈管侵襲がリンパ節転移と関連しているかどうかを検討した.また,病理組織学的検索として,組織型,SM浸潤距離,簇出を評価した.リンパ管侵襲(Ly)は,癌細胞を同定するCAM5.2とリンパ管内皮を同定するD2-40の二重免疫染色により評価した.静脈侵襲(V)は,血管弾性線維を染色するVictoria blue(VB)弾性線維染色により評価した.他の病理組織学的はHE染色標本で評価した.CAM5.2/D2-40二重免疫染色で同定されたリンパ管侵襲(Ly)陽性頻度は,腫瘍外が63.3%,腫瘍内が40.9%,VB弾性線維染色で同定された静脈侵襲(V)陽性頻度は,腫瘍外が27.8%,腫瘍内が5.8%であった.単変量解析では,簇出,腫瘍内Ly,腫瘍外Lyの3因子がリンパ節転移と有意に相関していた(P=0.0004, 0.003, 0.001)が,多変量解析では腫瘍内Lyは有意差はなく,簇出と腫瘍外Lyのみが独立したリンパ節転移リスク因子であった(P=0.040, 0.049).以上のことから,腫瘍内にもLy, Vは存在するものの,いずれも独立したリンパ節転移リスク因子ではないこと,HE染色標本に特殊染色を併用して内視鏡的完全切除大腸pT1(SM)癌の治療方針を決定する際には,腫瘍外Ly陽性のみが有用な所見であり,腫瘍内Ly陽性およびV陽性は,追加腸切除考慮因子とはならない可能性があることが考えられた.
新大院博(医)第1098号
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受理日(W3CDTF)2023-08-04T23:03:36+09:00
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