並列タイトル等Clinical Investigation of Hereditary Cerebral Small Vessel Disease with Migraine
一般注記脳小血管病は、頭蓋内の細動脈や毛細血管等の小血管の病変により生じる神経疾患の総称である。高齢者に高頻度に認められるが、稀に遺伝性の脳小血管病(mgCSVD: monogenic cerebral small vessel disease)が存在する。mgCSVDの代表的な疾患として、NOTCH3遺伝子変異によるCerebral cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy (CADASIL)、HTRA1、ABCC6遺伝子変異による脳小血管病がある。多くの脳小血管病患者から、如何に遺伝性脳小血管病を疑い遺伝子診断を行なうか重要である。CADASILでは、早期に片頭痛が高頻度に合併するとされる。しかし、mgCSVDにおいて、その合併頻度は不明である。遺伝歴を問わず55歳以下で発症した症例から診断されたmgCSVD60例を対象に、片頭痛の合併率、片頭痛を既往の有無による、臨床症状、画像的特徴を比較した。片頭痛合併率は11.7%と正常者よりやや高い程度であった。疾患毎の片頭痛の合併率は、CADASIL 8.6%、HTRA1ヘテロ接合体変異例25.0%、ABCC6ヘテロ接合体変異例33.3%であった。片頭痛陽性群は、片頭痛以外の神経症状(脳卒中・歩行障害・血管性認知症・認知機能低下)をより若年で発症した。しかし、神経症状の頻度、動脈硬化の危険因子の有無には差がなかった。頭部MRI画像では、後方循環領域の深部白質および脳室周囲白質病変は、片頭痛合併群で重度であった。次に、遺伝歴がある56歳以上のmgCSVD12例を加えた72例で、重度の後方循環領域の深部白質もしくは脳室周囲白質病変の有無を目的変数とし、CADASILか否か、片頭痛の既往の有無、性、発症年齢、動脈硬化の危険因子の有無を説明変数として、多重ロジスティック解析を行った。その結果、片頭痛の既往が、オッズ比5.7で重度の後方循環領域の深部白質病変のリスクとして抽出された。さらに孤発例を含めた全159症例を対象として、mgCSVDの有無を目的変数として、片頭痛の既往の有無、性、発症年齢(若年発症の有無)、重度の後方循環領域の深部白質および脳室周囲病変の有無、および小血管病のリスクである高血圧、糖尿病、脂質異常症、飲酒、喫煙を、説明変数として、多重ロジスティック解析を行った。その結果、片頭痛は抽出されず、後方循環の脳室周囲重度病変が、オッズ比2.4でmgCSVDのリスクとして抽出された。mgCSVDの片頭痛有病率は、健常者より僅かに高い程度であり、重度の白質障害患者からmgCSVDを抽出する際に、片頭痛の既往の有無は有用ではないと結論した。また、mgCSVD群では、片頭痛陽性者は、片頭痛以外の神経症状をより若年で発症し、後方循環領域の重度白質病変を示すことを明らかとした。
新大院博(医)第1099号
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受理日(W3CDTF)2023-08-04T23:03:36+09:00
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