タイトル(掲載誌)博士論文(埼玉大学大学院理工学研究科(博士後期課程))
一般注記カルチャーコレクション(Culture Collection: CC)は研究および産業上における微生物の公的な保存・提供の場として、微生物学の基礎および応用の両面で重要な役割を果たしてきた。近年では、CCは微生物の他、組織、細胞、DNAなどを含め広い意味での生物遺伝資源という観点から、「バイオリソースセンター(BRC)」と呼称されることも一般的になっている。ライフサイエンス分野においては、しばしば「リソースなくしては研究なし」といわれるように、バイオリソースは欠くことができない極めて重要な資源である。 CCの売上の半分以上を占め、もっとも大きいサービス業務であるカルチャーの分譲は、品質を保証して提供されなければならない。しかしながら菌株には変異が起こってしまうのが実状である。一方、本来あってはならないことであるが、ヒューマンエラーは避け難く、細心の注意を払っていても菌株のアンプルの取り違えによる単純なミスラベルが起こりうる。また最新の学名更新作業から漏れ、古い学名のままの状態で保存されている菌株も稀に生じる。以上の理由から菌株の品質管理のためにチェック作業を定期的に行なう必要がある。そのための実際の作業には、同定・分類の過程が含まれる。微生物の同定・分類には、表現形質の違いに基づく表現型と、遺伝子領域およびゲノムの塩基配列を直接あるいは間接的に観る遺伝子型による手法がある。同定であれば複数の手法を使用して段階的に絞込みをして行い、分類であれば対象菌株の属・種に応じて使用する手法を選択して行なっており、ダイレクトかつ統一的な同定・分類法がないのが現状である。 1990年に多情報なゲノム解析技術として開発されたGP法(原法)は、ランダムPCRでゲノム中から複数の遺伝子領域をランダムサンプリングし、得られた複数のDNAフラグメントを温度勾配ゲル電気泳動法(TGGE)により分離展開することで、結果的にフラグメントの塩基配列情報を反映させている。今日のGP法は原法にはなかった「内部参照試料による規格化処理」の追加により、GPデータの客観普遍化に成功したものである。 これまでにGP法を用いて大腸菌や類縁の腸内細菌に関する研究はあったが、専門的機関が管理する多種の微生物サンプルを対象にした体系的な同定・分類は試みられなかった。本学位論文研究は体系的に多数(真菌: 24種73株,乳酸菌: 3種24株、全27種97株)の微生物サンプルを対象として、カルチャーコレクションの菌株管理ツールとしてのGP法の有効性を検証し、菌株データベースの課題解消を目指したものである。 今回、TrichosporonおよびCandida株を使った解析では、GP法から得られたゲノム距離を使って、種レベルと株レベルを一括してクラスタリングした系統樹を作成することができ、その系統樹からラベル菌種名の誤りを指摘した。併せてゲノムプロファイル(GP)に検出された共通保存遺伝子断片(ccgf)からもラベル菌種名の誤りを指摘した。追跡調査としてD1/D2 26S rDNA 解析を行なった結果、GP法による指摘が正しいことを確認した。その後、菌株を保有するそれぞれのCCにおいて正式にラベル菌種名の変更が実施された。 また、今回ゲノム距離マトリックスを一定の距離範囲ごとに色分けを施した三角距離図を作出することで、一見距離のあると思われた種が以外にも近い関係にあることを示す新たな知見を浮上させ、GP法の解析方法としての用途幅の広さを示すことができた。 真菌および細菌を含めた全27種97株を対象としたGP法で得られたゲノム距離を元にして作成した系統樹では、今後の更なるデータの蓄積による解析の必要はあるが、株の差異を表しつつ属毎・種毎にクラスタを形成し、統一した手法でグローバルな(下は株レベルから上はドメイン(界)レベルまで)生物を対象にGP法による一括分類の可能性を示すことができた。これはCCの使命としてすべての菌株に共通して適用可能な同定・分類法が求められている現在、単に直接的に塩基配列を決める手法の利用に限らずに、幅広くかつ高効率・高性能な技術(GP法)の導入を現実的にしたという意味をもっている。
要約 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2序論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51章 GP 法開拓の背景と理論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・121節 背景 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・122節 GP 法の関数的特性とその理論 ・・・・・・・・・・・・・・・143節 内部標準試料のダブル化による精度向上の検討 ・・・・・・・232章 カルチャーコレクションに向けてのGP 法の応用 ・・・・・・・261節 緒言 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・262節 実験材料および実験方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・303節 結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・364節 考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・453章 総括 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・51謝辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・54引用文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・55図表 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・65
主指導教員 : 教授 西垣功一
コレクション(個別)国立国会図書館デジタルコレクション > デジタル化資料 > 博士論文
受理日(W3CDTF)2015-03-01T07:09:42+09:00
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